書名:火天の城
著者:山本 兼一
発行所:文藝春秋
発行年月日:2004/6/15
ページ:359頁
定価:1524円+税
安土城は謎に包まれている城である。尾張熱田の御大工岡部又右衛門以言、岡部又兵衛以俊の親子が中心になって安土城を建設していく職人たちの物語。完成から短期間で焼け落ちてしまった。安土城を模写した資料、建設の時の図面類なども残っていない。もう少し長く存在していれば絵、図面などが残っていた可能性があるだけに惜しいことである。
逆に、作家の一人舞台で物語を創造していく意欲が出て来る題材かもしれない。
この物語では織田信長が桶狭間の戦いの前に立ち寄った熱田神宮で岡部又右衛門以言に出会うところから始まっている。そして織田信長が行くところ城、砦の作事は岡部又右衛門以言が同伴するという織田信長に信頼された大工として描かれている。第十一回松本清張賞受賞作。
御大工岡部又右衛門以言、岡部又兵衛以俊がいろいろと工夫と苦労しながら安土城を建設していく課程が克明に書かれている。また安土城の普請を妨害する六角、武田の忍び、甲賀伊賀忍び、の存在。なかなか一筋縄には行かない。読み応えのある作品である。