書名:日本列島改造論
著者:田中角栄
発行所:日刊工業新聞社
発行年月日:1972/6/20
ページ:219頁
定価:500円
昭和47年(1972年)と言えばちょうど40年前、横浜に来てすぐの頃、都市への一極集中で超過密都市の出現、一方地方は過疎地がいっぱい。高度成長期で毎年給料は上がるが、物価も地価も上がる。大気汚染、河川汚染、公害だらけの都市。若者は大都市に流れ、地方では出稼ぎそんなさなか出てきた「日本列島改造論」であった。
この書の言わんとしていることは「国民がいまなによりも求めているものは、過密と過疎の弊害の同時解消で美しく、住みよい国土で将来に不安なく、豊かに暮らしていけるである。そのためには都市集中の奔流を大胆に転換して、民族の活力と日本経済の逞しい余力を日本列島の全域に向けて展開することである。工業の全国的な再配置と知識集約化、全国新幹線と高速自動車道路の建設、情報通信網のネットワークの形成などをテコにして、都市と農村、表日本と裏日本の格差は必ずなくすことができる」(本書より)
40年たって今もう一度振り返ってみると、この本の中で課題とされていた「過密と過疎」の問題は益々拡大された。都市の農村の問題もそのまま。あんまり変わっていないことが分かる。隅田川、多摩川など都市河川の汚染はすっかり綺麗になった。40年を懐かしく振り返ることが出来る。この本が発行された当初通産省官僚によるゴーストライター説だとか?全国に公害をまき散らすのかと評判もいろいろあったが、当時の政治家は少なくとも今よりずっと勉強して実態を把握していたと思う。
特に議員立法で法律を成立させた実績も半端ではない田中角栄はやっぱり頭が良かった。勉強していた。それと説得力があった。今読んでも新鮮なアイデアも一杯ある。部分的には実行されてきた施策もあるが、それぞれ中途半端だった。やっぱり政策、施策は全体を十分立案した上で実行していかないと破綻してしまう。そんなことを考える上でも、もう一度読み直して見る価値の本だと思う。