書名:湖賊の風
著者:高橋 直樹
発行所:講談社
発行年月日:2001/8/10
ページ:345頁
定価:2000円
いまは滋賀県と京都府は県境があるが、この物語の室町中期頃では都への入り口となる琵琶湖、琵琶湖のくびれた部分にある堅田は重要な拠点(水運の関所)、膨大な水運利権を巡る闘いの舞台であった。中でも堅田関の船道(ふなど)衆は「湖賊(こぞく)」と呼ばれ人々に恐れられていた。比叡山延暦寺の一派から委託を受けて税関の業務を行っていた。
堅田は彼ら船道衆と商人組織(浄土真宗を母体とした真宗派)、郊外の猟師村で構成されていたが、猟師村は身分も低く差別されていた。そんな漁師出身の青年魚鱗(うろくず)が天才的な操船術で関を破る。現状維持に四苦八苦する船道衆、商人組織、比叡山延暦寺の僧兵とは違って1人、琵琶湖を舞台に自由な都市、組織を目指した。蓮如をして「地獄へ落ちても他力にすがらぬ」と言わしめた魚鱗(うろくず)の生涯を描いている。応仁の乱前夜の琵琶湖を舞台にした波瀾万丈の物語。なかなか面白い。