書名:限界を超えて
生きるための選択
著者:ドネラ・H・メドウズ、デニス・L・メドウズ
訳者:茅 陽一、松橋隆治、村井昌子
発行所:ダイヤモンド社
発行年月日:1992/12/3
ページ:376頁
定価:2200円
1972年「成長の限界」デニス・L・メドウズら、ローマクラブレポートとして「あと20年で石油が枯渇する。環境悪化によって100年以内に人類の成長は限界に達すると警告をならした。地球が無限ではなく有限だということを人々に認識させた。又環境に対しても大きな問題提起をした。そして人々は「現在のままで人口増加や環境破壊が続けば」という但し書きを忘れて、大騒動して石油ショックなどが起こった。
それから20年の1992年には続編として本書が出版された。本書ではコンピュータモデルをいろいろとつくって最良から最悪の場面を想定したシミュレーションを行った地球の未来を検証している。 「資源採取や環境汚染の行き過ぎによって21世紀前半に破局が訪れるという、更に悪化したシナリオが提示されている」逆に人類が持続可能な社会を継続していけるモデルも提案している。そして著者らが提案しているコンピュータモデルはあるモデルであり完全ではありえない。また他にも選択技がある。このシミュレーションもある一例に過ぎないと「成長の限界」の時に比べてトーンダウンしている。また地球的なモデルを作るには何億人という英知を集めないといけないと。大きなビジョンを提案している。
しかし、「成長は正しい」と信じていた社会に「発展」を進めている。成長とは幾何級数的に増加していく、量の増大のこと。発展は質の増大のこと。持続可能な社会の実現のためには「ビジョンを描くこと、ネットワークづくり、真実を語ること、学ぶこと、愛すること」5つの手段を進めている。
人口増加問題、環境汚染問題、経済問題、貧困の問題を考える上でひとつの指針となるのではないか?成長神話からは貧困問題は解決しないとも言っている。経済がいくら成長しても分配が公平に行われない。貧困はいつも残されてしまう問題。「成長は良いことではない。」発展に移行していかないと破局はすぐにやってくる。それは現在だけの人々だけではなく将来の人々のことも考えられる持続可能な社会を目指していかないと言っている。
年率2%で成長したとして幾何級数的に増加するかを簡単に求めるには70÷2=35年(倍になる年数)、70÷xを覚えていくと指数関数で増大する。減少することを直感的に暗算できる。持続可能な社会は100年、200年よりももっと長い単位で考えてみることが必要、今だけが良かったらいいのではない。この書の結論はちょっと遅くなったかも知れないけれどやり方によっては人類の未来は明るいと言っている。