書名:桜抱き
著者:山本音也
発行所:小学館
発行年月日:2005/4/20
ページ:285頁
定価:1600円+税
昭和30年のある夏の日、和歌山市を舞台に二人の小学校4年生の出会いから物語は始まる。紀ノ川の筏師を束ねて隆盛を極めていた父、その後零落した。その一人息子広之、大阪から夜逃げしてきた一家の男の子、勝治が川原で出会った。二人で川、城址での遊び、勝治の母の水死事故、大阪に住む生みの親を訪ねる。きらきらと光った日々であったり、そこには悲しさを含んだ出来事だったり、それぞれの家族に見守られながらも生きていく少年の日を語っていく、勝治の母の水死、父の逮捕で「新宮」の叔父に引き取られていく勝治姉弟とのわかれ。
広之の父が語る「人間の魂は、吉野の山に咲き誇る桜の花びらに抱かれている」という言葉の意味を教えた。 生きることは切なくて、魂はひりひりと泣く。それでも人は生きていく。貧しい暮らしでもどこかほのぼのとした家族、地域の人々の愛がいっぱいの昭和の夏の風物詩を彷彿とさせる小説です。山本音也は和歌山県出身の作家。