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あの世この世の軍立ち

書名:あの世この世の軍立ち
著者:山本 音也
発行所:講談社
発行年月日:2004/11/26
ページ:318頁
定価:1700円+税

 歴史の表舞台にはほとんど登場しなかった最上義光の晩年から江戸時代の初めまでが舞台。最上家57万石を放り投げた鮭延備前の守、対向する松根越前の守それぞれの上司に仕えた幼なじみの伊織、源四郎の人生を伊織の回顧風に綴る。伊織が亡くなって墓場から回顧しているという面白い設定。出世を望む源四郎、穏やかに暮らしたい伊織の二人の対比が面白い。
 最上義光の死後、後を継いだ家親は元和3年(1617年)に急死した。このため、義光の孫・最上義俊が藩主となったが、後継者をめぐる抗争が勃発し松根越前の守派が幕府幕客に賄賂を送って藩内を牛耳ようと暗躍する。それに鮭延備前の守は対向する。しかし家中不届きであるとして、義光の死からわずか9年後の元和8年(1622年)最上57万石は改易となった。

 そして鮭延備前の守、松根越前の守の二人とも謹慎、大名預かりになる。その二人に仕えた伊織、源四郎はそれぞれについていく。お家再興の願いもむなしく全く展望のない二人の生き様、なんとなくやりきれない。
 伊織の愚痴、ぼやきが随所に出て来る。リストラにあって何も出来ない伊織の人生観、幸せ感、武士としての節度などが交差する。ゆっくりした作品。でも今の時代には向いていない感じもする。藤沢周平を彷彿させる作品。