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霊鬼頼朝

書名:霊鬼頼朝
著者:高橋 直樹
発行所:文藝春秋
発行年月日:2004/10/10
ページ:314頁
定価:1619円+税

義経、頼家、実朝、公暁…源氏の血が滅びてゆく。壇ノ浦、平泉、鶴岡八幡宮の悲劇は、武者(つわもの)どもの夢と源氏の血の宿命に導かれた。武士政権の曙に秘められた、真実の姿。
「無明の将軍」「平家の封印」「奥羽の風塵」「源太の産衣」の四編を収録。
鎌倉幕府は何故か血に塗られた陰湿な雰囲気が常に漂う。平清盛のお情け(池禅尼)で生きることが出来た頼朝、伊豆に幽閉され暗い時代を過ごしたせいか自分以外は信用しないかなり屈折した性格を身に付けたのかも知れない。弟義経に対する執拗な嫌悪、自分以外は排斥する。そんな性格が鎌倉三代に引き継がれて、家来、御家人達にも移っていったのか?

頼朝-頼家(次男)-実朝(四男)で滅亡してしまった。それも一族の中で血で血を争う。
古都鎌倉にはそんな陰湿なイメージがぬぐえない。雅、晴れやかさなどが感じられない気がする。この霊鬼頼朝を読むとその理由がわかってくる気がする。
武士が政治を支配したのは源頼朝と言われているけれど、実は平清盛の方が早い。頼朝より清盛の方が余裕と優雅さがあったような気がする。また御家人などもやっぱり田舎臭い。比企一族、三浦一族、北条一族など陰湿な権力争いに翻弄された頼朝の子孫達はそんな川の流れに流されてしまったのかもしれない。