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福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書

書名:福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書
著者:福島原発事故独立検証委員会
発行所:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発行年月日:2012/3/11
ページ:403頁
定価:1500円+税

福島原発事故が起こって1年、3月11日に発売された福島原発事故独立検証委員会の調査・検証報告書です。400ページを超える大部でA4版にぎっしりと書かれています。読むのに普通の本の3倍ほど時間が掛かりました。

福島原発事故について詳細にいろいろな角度から取材、調査、分析がされています。原子力関係法、指針、原子力安全委員会、原子力安全・保安院、東電、政府の位置づけなど詳しく判ります。普通事故報告というと原発本体の事故の経緯、原因追求に終始しますが、これは日本という国のトータルでの実力を図っているという感じがします。決定的なミス、組織の動かし方、事故対応など。殆ど素人が対応したような情けない場面がいっぱいですが、それも危機管理に対する日本という国としての対応のまずさ、これも実際の実力なのでしょうな。

官邸も、原子力安全委員会も保安院も東電も組織としてはほとんど機能しなかった。こんな国で放射性廃棄物の処理(無毒化)もできない。地震、津波、テロであっても一度事故が起こると11万人以上の人が避難して1年以上もそのまま、先の見込み判らない状態になるような巨大原子力技術を使った発電なんて、やること自体が間違いだった。そんな気にさせられます。

これは福島原発事故独立検証委員会見方です。こんご政府の事故調、他からも報告が出て来ると思います。それぞれ比べて見たいと思います。1年しかないのに良くまとめた報告だと思います。ただもう少し突っ込みがたりない。ちょっと歯がゆい感じがするところも。

口絵
・福島第一原発の状況、施設配置図、構内の空撮写真、
・SPEEDIの試算データ、被災した病院の地図、
・ワーキンググループ会合のゲストと検証委員会、避難した住民の暮らし

福島原発事故独立検証委員会 北澤宏一 委員長メッセージ
「不幸な事故の背景を明らかにし安全な国を目指す教訓に」
船橋洋一 プログラム・ダイレクターからのメッセージ
「真実、独立、世界」をモットーに

プロローグ 証言-防護服姿の作業員はみな、顔面蒼白だった-

■第1部  事故・被害の経緯
第1章  福島第一原子力発電所の被災直後からの対応
第2章  環境中に放出された放射性物質の影響とその対応
■第2部  原発事故への対応
原子力施設の安全規制および法的枠組
第3章  官邸における原子力災害への対応
第4章  リスクコミュニケーション
第5章  現地における原子力災害への対応
特別寄稿 原発事故の避難体験記
日本原子力産業協会参事 北村俊郎
特別寄稿 原発周辺地域からの医療機関の緊急避難
m3.com 編集長 橋本佳子

■第3部  歴史的・構造的要因の分析
第6章  原子力安全のための技術的思想
第7章  福島原発事故にかかわる原子力安全規制の課題
第8章  安全規制のガバナンス
第9章  「安全神話」の社会的背景
■第4部  グローバル・コンテクスト
第10章 核セキュリティへのインプリケーション
第11章 原子力安全レジームの中の日本
第12章 原発事故対応をめぐる日米関係
最終章 福島第一原発事故の教訓--復元力をめざして

検証委員会委員メッセージ
・遠藤 哲也委員 福島事故が露呈した原子力発電の諸問題
・但木 敬一委員 国は原発事故の責任を自ら認めるべきだ
・野中郁次郎委員 現実直視を欠いた政府の危機管理
・藤井眞理子委員 危機における情報開示に大きな課題
・山地 憲治委員 信頼の崩壊で危機を招いた事故対応
・福島原発事故検証委員会ワーキンググループ・リスト

資料 福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描
(近藤駿介原子力委員長作成のいわゆる「最悪シナリオ」全文)