書名:草原の椅子(上)
著者:宮本 輝
発行所:毎日新聞社
発行年月日:1999/5/30
ページ:321頁
定価:1500円+税
書名:草原の椅子(上)
著者:宮本 輝
発行所:毎日新聞社
発行年月日:1999/5/30
ページ:361頁
定価:1500円+税
大学院で光工学を専攻して、カメラメーカーの研究者として入社、40才頃に営業部門に異動となって大阪の営業所に勤める遠間憲太郎50才、2年前に20年目にして妻と離婚して娘と二人暮らし。妻と息子は東京に。中学を卒業していろいろな職業を渡り歩いて30才過ぎになってカメラの量販店を経営した富樫重蔵50才の二人が主役。
この小説は今の日本は「どうなってんのんや」と結構現在の政府、政治、組織、道徳などにいろいろと愚痴を一杯並べている。それに対してこうすればという提案もありますが、どちらかというとそんな世の中から脱出して自分たちの世界。タクラマン砂漠(日本の面積と同じ位)に行くという目標。そして日々起こる出来事を綴っている。ぼやき小説。人々の生きている世界では常に起こる。考えることを著者が変わって自問自答してくれている。
そんな感じもする。宇宙の中に一人の人間として考えてくるとなんでもたいしたことはない。どちらかというと何事にも慎重に考える憲太郎。それに比べて楽天的に考える重蔵、この二人のコンビの友情が暖かい。明治以後西洋の思想がやって来て理ばかりの世の中。情理を忘れた世界。人情がない理はどんなりっぱなものであっても正義とは言わない。情を考えさせられる。