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本に出会う

骸骨ビルの庭

書名:骸骨ビルの庭(上)
著者:宮本 輝
発行所:講談社
発行年月日:2009/6/23
ページ:288頁
定価:1500円+税

書名:骸骨ビルの庭(下)
著者:宮本 輝
発行所:講談社
発行年月日:2009/6/23
ページ:282頁
定価:1500円+税

大阪の十三が舞台。矢木省三郎はビル管理人として通称骸骨ビルに着任する。仕事はそこの住人を立ち退かすため。
その古いビルに住んでいたのは、このビルの亡きオーナーの親友と、彼らにここで育てられていたかつての戦災孤児たちだった。ビルの現在の居住者たちは立ち退きには同意しているが、明確な理由を告げずに住民たちは依然住み続けている。八木沢が3人目の担当者として着任した。
物語は太平洋戦争から復員して、農業の研究をもう一度やって見ようとしてこの骸骨ビルに戻った阿部轍正。そこには戦災孤児たちが2人住んでいた。そして戦災孤児たちを育てようと決意した阿部轍正そしてその友人親友の茂木泰造とここで世話になった戦災孤児達29人のそれぞれの関わり、生活を描いている。現代人が失った純粋な生き方が、今、鮮やかに甦る。

本書より
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「私が畑仕事で知ったことは、どんなものでも手間隙をかけていないものはたちまちメッキは剥(は)げるってことと、一日は二十四時間が経たないと一日にならないってことよ。その一日が十回重なって十日になり、十日が十回重なって百日になる。これだけは、どんなことをしても早めることができない」

「古くからの得意先の元社長で、いまは息子に跡を譲って隠居している七十三歳の老人がいる。仕事絡みであろうが、ただの友人であろうが、この人と仲良くして、つねに接してきた者たちは、ひとり残らず良くなっていく。運が開けていくと言ったほうがいいかもしれない。商売が発展していく。私生活でのいろんな悩みが少しずつ確実に解決していく。放っておけば命に関わったであろう病気が、ひょんなことで早めに見つかって大事に至らずに済む……。とにかく、いろんなことが良くなっていくのだ。といっても、それが一ヵ月や二ヵ月でそうなるのではない。五年、十年という歳月を経て、気がつくと五年前、十年前よりもあきらかに良くなっているのだ。逆に、その人を憎んだり、悪口を言ったり、裏切ったりして、疎遠になったものは、見事なほどに落ちていく。重い病気にかかって亡くなったり、それまで平和だった家庭に波風が生じ、やがて一家離散という憂きめに遭ったり、順調だった商売が左前になったり、勤め先を馘(くび)になったり……。とにかくゆっくりと階段を転げ落ちるように境遇に災いが起きつづけていく」

*コレステロール値、中性脂肪値の改善法について
「寝る前に、根昆布を三、四個、水に入れた大きめのコップに入れておき、朝起きてすぐそれを飲むのだという。その水を飲むとき、戻って膨れた根昆布は捨てる。昆布の味と粘りのある水を一ヵ月飲みつづけたら、個人差はあるだろうが、確かに血中の中性脂肪値が下がる。