書名:親鸞 吉川英治全集14
著者:吉川 英治
発行所:新潮社
発行年月日:1980/6/21
ページ:546頁
定価:1600円+税
この親鸞は何十年も前に読んだことがある。親鸞の出自を源氏の義経、頼朝と又従兄弟として描いている。また最初の師は慈円僧正が叡山の新座主になって叡山に登ることなる。吉川英治の小説は可能性のあるネタを少しでも大きく、面白く広げていく手腕は見事なもの。歴史、史実はちょっとというところも吉川英治に書かせると本当のことと思わせてしまう面白さがある。また読者を忽ちの内に作品の中に引きずり込んでしまううまさは流石だと思う。500ページを超える長編ですが、2回目にも関わらずついつい読み通してしまった。親鸞の周りに関わるキャストが個性があって善人もいれば極悪人もあり、それらが効果的次々と現れてくる。中々面白かった。宮本武蔵の又八、お杉婆のようなキャラクタもあって物語をグイグイと引っ張っていく。この作品は「親鸞記」に続く2回目の親鸞で、昭和10年頃書かれたもの、後書きで吉川英治は、もう一度親鸞を描いて見たいと書いていたが、その願いは叶わなかった。その後親鸞を書いている作家は丹羽文雄、最近では五木寛之。それぞれ読み比べるのも面白い。なかなかの力作です。