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私本太平記

書名:私本太平記(一)吉川英治全集39巻
著者:吉川 英治
発行所:講談社
発行年月日:1969/1/20
ページ:436頁
定価:680円

書名:私本太平記(二)吉川英治全集40巻
著者:吉川 英治
発行所:講談社
発行年月日:1969/1/20
ページ:480頁
定価:680円

書名:私本太平記(三)吉川英治全集41巻
著者:吉川 英治
発行所:講談社
発行年月日:1969/1/20
ページ:454頁
定価:680円

鎌倉幕府の北条政権の崩壊と南北朝の始まりの時期の物語。執権北条高時の時代の鎌倉時代は各地の武士、庶民の不満が高まったいた時期。そんな中に登場してきた源氏の足利尊氏、新田義貞、楠木正成、そして後醍醐天皇。混沌とした時代の人間模様をドラマチックに描いた私本太平記。天皇というのは天子、皇帝からとった日本独自の漢字。

そして現天皇は今上天皇と呼ぶ。尊治という名だけ。亡くなって初めて後醍醐天皇のように名前がつけられる。実は天皇には苗字がない。この仕組みを発想した人は誰?天才ですね。これは大発明ですね。中国では皇帝には苗字、名前があります。そしてその皇帝を倒して次の皇帝が立つ。これを革命という。

易性革命。で革命を起こすことが出来るのは徳があるという条件。従って次の王朝は自分の正当性の中に必ず徳があることをアピールする。しかし日本の天皇は天皇一族以外は取って代わらない。変えられないようになっている。唯一この天皇に取って代わろうとした人は居たかも知れないが、実際には実現しなかった。この不思議な天皇制は延々と続いてきた。平家の時代は後白河天皇、この時代は後醍醐天皇というかなり強気のカリスマが居たのですね。その後醍醐天皇と足利尊氏、虚々実々のやり取りがいろいろな物語となって登場してくる。

鑁阿寺での祖父足利家時の置き文「南無八幡大菩薩。私は足利家の悲願を成就させるべき立場にありながらこの所行。恥じ悔いております。願わくば、この命ささげますのでどうか三代後にふただび生れかわり真に天下を取らせたまえ。」という遺言に尊氏、直義兄弟、足利一族郎党が決起して、丹波篠村八幡宮で挙兵する。新田義貞に負けて、九州へ逃げるときもやっぱり丹波篠村八幡宮に一時待避、その後兵庫へ逃げていく。足利尊氏は元服してから亡くなる直前まで勝ったり負けたりの連続、子の義詮の時代になっても安定せず、南北朝が60年近く併存してしまった。その後の応仁の乱を予想させる室町幕府の創始者の生涯を見ることができる。この物語の中にはいろいろなタイプの人間が出て来る。それは今の昔も変わらない人間の業というものを感じさせる。全編に渡って起承転結が次々と巡ってきて飽きることない長編小説です。

数十年前に読んだことがあるけれどその当時は、関東方面などは地理もしらず名前も知らないところが多かったのですが、鎌倉を始め、足利市、世良田、分倍河原、黄瀬川など地名とともに実際に訪れたところも多く、この小説の場面が実感としてわかると又違った楽しみ方が出来たと思います。ふるさとにある丹波篠村八幡宮など源義経の領地だったこともあり、源氏とゆかりが深い。老いの坂も足利尊氏、明智光秀が越えて京都に攻め入った最初の基点だったり、歴史は繰り返すという因縁も感じされて興味深い。