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本に出会う

チェンジング

書名:チェンジング
著者:吉富多美
出版社:金の星社
発行年月日:2008/8
価格:1400円+税
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「怒るのも泣くのも自分を作るいいスパイスになるはず。じっくりゆっくり「心の鍋」煮込んでいこう。子どもたちに今こそ読んでほしい一冊です。(青木和雄)
ぼくもきっと自由を選ぶよ
イギリスの歴史物語「チェンジングワールド」その主人公・勇者ルーカスに自分を重ねながら、森河大夢はクラスのいじめにたえていた。しかし偶然出会った料理教室の先生・香奈子に料理を教わるうちに、大夢はさまざまな「味」があることを学んでいく。いじめる側の亨、新たないじめのターゲット勇人、一人立ちむかおうとする優菜、そして笑顔を見せなくなった父、それぞれの味。くりかえし、くりかえしアクをとり、手間をかけ、ひとつのスープが出来上がっていくように、やがてすべての「味」が変化して、自分という名の料理を作り上げていく。
  (本書本文より)
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  11才の少年が「真の勇者の道」を進んでいくストーリー、いじめに会わないように逃げ回っているところから始まる。子供の世界を料理の世界になぞらえて、いじめ、受験、先生、大人それぞれの味をいかに付けていくのか?成長の過程を示している。いついかなるときにも笑いと勇気、元気を忘れない強い力と優しさが共存している物語である。現実には夢のような世界というようなところもあるが楽しさ、優しさが伝わってくる。
 次は次はと読みたくなってくる作中に引き込まれてしまう。そこに人として持っていないといけない何かが強く伝わってくる作者の力か?多分小学生用の本だと思いますが、大人でも思わず読んでしまう。読んですがすがしさとちょっと苦み、自分を振り替えさせる強い力を感じました。一編の詩集を読んでいる何気ない普通の言葉が連なっているのですが、底に深く染みこんでくる強い強い力と優しさとまだまだ世の中捨てたものではないという開き直りなどがいりじまじった感じがしました。子供の世界の話ですが、実は根底のところで作者は是非ともお父さんお母さんに読んで欲しいと訴えてくる本だと思います。子供の問題ではなく大人の問題、責任をじっくりと考えさせられるそんな気がしました。子どもたちは素直で良い子でも「味」をどうして付けていくか?これには大人の責任と期待、希望も、興味もいろいろとその子供に注ぎ込む愛情、感心の度合いでいろいろと変わってしまう怖さを訴えているような気がします。お子さんと一緒に読んでみたい本の一冊では?
 なぜこんな本に出会ったかというと「ハッピーバースーディー命かがやくく瞬間(とき)」の共著の一人である吉富多美さんとあることから知り合いになって4 年ほど。ボランティアで一緒で話をする機会はいろいろ会ったのですが、作家ということは何となく聞いていたでもどんな作品を書いておられるのか知らなかった。先日本屋で何気なく「ハッピーバースーディー命かがやくく瞬間(とき)」を見つけて一緒に買ってきた一冊です。