書名:戦後史の正体 1945-2012
著者:孫崎 亨
発行所:創元社
発行年月日:2012/8/10
ページ:386頁
定価:1500円+税
著者は戦後史を読み解く視点として「対米従属路線」対「自主独立路線」の対立という考え方から1945年から2012年の政治史を中心に独自の見解を示している。そして今までは陰謀説等が騒がれたことがあったが、きっちりと事実を指摘しながらわかり易く解説してくれる。この本の特徴は高校生でも理解出来る内容と銘打っているとおり易しい語り口でわかり易い。
8月15日の終戦記念日は知っている人はいても9月2日のポツダム宣言受諾した敗戦が決まった日は殆どいない。敗戦を終戦と言い換えてポツダム宣言。降伏文書なども見た人は殆どいない。この本の巻末には両方とも収録されている。
物議を醸し出している東京地検特捜部、実は、1947年の隠退蔵物資事件を契機に、東京地検に設置された「隠匿退蔵物資事件捜査部」がその前身である。その出自から、米国との深いかかわりを持つ組織なのである。GHQの手下なって暗躍していた。また、吉田茂氏が、日本の思想警察組織として、内閣調査室と公安調査庁を設置して、CIAとの連携を図ったことも明らかにされている。東京地検特捜部では芦田均の昭和電工事件、ゾルゲ事件等の布施健。ロッキード事件の堀田力。陸山会事件の佐久間達也。などが。
戦後すねに傷がある人物がGHQ、アメリカのシンパとして日本の指導者的立場を確立していった。日本で最初の民間テレビ放送会社である日本テレビ放送網は、やはり戦犯容疑釈放者として知られる正力松太郎氏が創設したものだが、この正力氏にはPODAMという、CIAのコードネームが付されていた。
戦後の政党史、外交・軍事・産業政策、政変や疑獄の解釈が極めてよく見えてくる。、現在の政治的混乱の背景も実によく理解できる。戦後、何らかの形で自主独立を主張した首相である重光葵、石橋湛山、芦田均、岸信介、鳩山一郎、佐藤栄作、田中角栄、福田赳夫、宮澤喜一、細川護熙、鳩山由紀夫のほとんどが、意図せざる形で退陣させられている。この流れに繋がるのが陸山会事件であることはもちろんである。鳩山由紀夫もいろいろ問題があるが、「沖縄から県外、国外に基地を移すというのは当たり前のこと。」でもいろいろな妨害で失脚した。これに懲りた「管直人」「野田」はまたアメリカべったりに「対米従属路線」をなにも考えず進もうとしている。自民党の総裁候補も日米同盟を声高に謳っている。これも「対米従属路線」の継承か?
「対米従属路線」が良かったか「自主独立路線」が良かったは長い歴史が答えを出してくれるでしょう。アメリカも一枚岩ではなく世界の状況によって方針が大きく揺れているので、どれが良いということではなくて、今後の日本の進むべき道をどう舵取りして行けばいいのか。また世の中の動きを見る上で非常に示唆に富む良書だと思う。ひとつの歴史の見方として優れているのではないかと思う。知らなかったことが3.11以後、ようやくぼちぼち出てきたことは良いことかなと思う。
目次
はじめに
序章 なぜ「高校生でも読める」戦後史の本を書くのか
第一章 「終戦」から占領へ
第二章 冷戦の始まり
第三章 講和条約と日米安保条約
第四章 保守合同と安保改定
第五章 自民党と経済成長の時代
第六章 冷戦終結と米国の変容
第七章 9・11とイラク戦争後の世界
あとがき