記事一覧

本に出会う

おたから密姫

書名:おたから密姫
著者:米村 圭伍
発行所:新潮社
発行年月日:2007/11/20
ページ:461頁
定価:1900円+税

主人公は九州豊後の小藩である温水藩二万五千石、藩主乙梨利重の末娘蜜姫とこの娘の「甲府御前」が主人公。甲府御前は甲斐武田家の血筋を引き、学識豊かで頭脳明晰の才女、自由奔放で密姫を使って難問を解決していく。密姫は女ながら男の恰好をして剣を振るい、冒険好きのおてんば。
温水藩の隣の風見藩時羽家に仙台伊達家から縁談が持ちかけられた。その縁談には奇妙な厳しい条件が一つあった。竹取物語のかぐや姫が求めた五つの宝のうち、どれでもよいから一品持参せよという条件。

「仏の石の鉢」、「蓬莱の玉の枝」、「火鼠の皮衣」、「龍の顎の五色に光る玉」、「燕の子安貝」の謎を探っていき、日本書紀、古事記、風土記、今昔物語、源氏物語、宇津保物語を巡り、かぐや姫が大陸渡来の金属製錬技術を持った一族から使わされたとし、大和朝廷が金属製錬技術の取得を策略した物語と想定して、砂金から鉱山からの金の採取、製錬術、武田の隠し金山。江戸時代の初めの大久保長安、その後の事件と奇想天外な物語が展開する。あまりにも多岐に渡った壮大な歴史ロマンが横たわっている。

作者の教養、知識を披露しながら実は読者の力を試している。いや試されている。気楽な読み物として読むこともできるが、その奥深さはなかなかものがある。第一弾の『おたから蜜姫』も読んでみたい。