書名:破獄
著者:吉村 昭
発行所:岩波書店
発行年月日:1983/12/21
ページ:339頁
定価:1500円
無期刑囚の佐久間清太郎が犯罪史上未曾有の4度の脱獄を実行した。というニースネタとしてはそれなりに価値があるかも知れないが、普通の人にとっては大した話ではない。そんな題材をドラマチックに仕上げている。実際にあったフィクション、戦前、戦中、戦後の犯罪史、刑務所の内情などを各時代に置ける歴史を踏まえて一無期刑囚の行動を通して描いている。
昭和11年青森刑務所脱獄。昭和17年秋田刑務所脱獄。昭和19年網走刑務所脱獄。昭和22年札幌刑務所脱獄。そして府中刑務所に収監されて、仮出所で釈放される。当時の刑務所は1日6合の主食、一般は2合3勺、刑務所の方が待遇が良かった。看守は食うや食わず。特に網走刑務所は食料は豊かだっとか。裏面史も面白い。獄房で厳重な監視を受ける彼と、彼を閉じこめた男たちの息詰る闘いそして脱獄を許してしまう。府中刑務所に収監されて佐久間清太郎「もう疲れてしまった」という一言が非常に印象的でした。吉村昭の真髄が見られる力作です。