書名:にぎやかな天地(上)
著者:宮本 輝
発行所:中央公論新社
発行年月日:2005/9/30
ページ:370頁
定価:1600円+税
書名:にぎやかな天地(下)
著者:宮本 輝
発行所:中央公論新社
発行年月日:2005/9/30
ページ:357頁
定価:1600円+税
フリーの編集者船木聖司は顧客の老人(松葉伊志郎)から「日本の優れた発酵食品を後世に伝える本」の製作を依頼される。船木は豪華限定本の編集、製作を手がけている。今回の仕事は糠漬、熟鮓、醤油、鰹節…等の日本の発酵食品。日本各地を取材する内に微生物の偉大な営みに魅せられていく。
船木聖司は神戸出身で独身、京都在住の製本職人。パトロンの松葉伊志郎に依頼されて、発酵食品の本を作ることになります。その協力者として料理家の丸山澄男、彼女の美奈子、カメラマンの桐原、助手の寺沢といった仕事がらみの人脈と、彼の実家の母親、姉、母親の腹違いの兄の家庭、父親の死に大きく関わった人の家族との人間模様が並行して描かれます。32年前と7年前の、ある「死」がにぎやかな“時間”を運んでくる。発酵食品の取材で京都宮津の飯尾醸造(酢)、鹿児島の丸久鰹節店(鰹節)、和歌山新宮の東宝茶屋(なれ鮨)、滋賀県高島町の喜多品(鮒鮨)など実際の店を訪ねている。久々の面白い作品です。
本書より
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死というものは、生のひとつの形なのだ。この宇宙に死はひとつもない。
きのう死んだ祖母も、道ばたのふたつに割れた石ころも、海岸で朽ちている流木も、砂漠の砂つぶも、落ち葉も、畑の土も、おととし日盛りの公園で拾ってなぜかいまも窓辺においたままの干からびた蝉の死骸も、その在り様を言葉にすれば「死」というしかないだけなのだ。それらはことごとく「生」がその現われ方を変えたにすぎない。
この物語は、「死から生まれる生」あるいは「不死であること」を描いています。
私は死を怖がらない人間になることを願いつづけた。
だが、そのような人間にはついにはなれなかった。
きっと私に、最も重要なことを学ぶ機会があたえられなかったからだ。
(死というものは、生のひとつの形なのだということを。)
ならば、私は不死であるはずだ。
◆富士酢◆飯尾醸造ホームページ
http://www.iio-jozo.co.jp/
丸久鰹節店:鹿児島県枕崎
http://www.meihin-kyushu.com/mall/maruhisa/
喜多品:ふなずし老舗「廃業」 400年の伝統…不振
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20120805ddlk25020359000c.html
「喜多品」飛び込み取材の巻
http://www.sol.dti.ne.jp/~sin-saho/syokutano-funazushi.htm
ぐるなび - 東宝茶屋 (串本町・那智勝浦・新宮/居酒屋)
http://r.gnavi.co.jp/3100029/