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愛新覚羅王女の悲劇

書名:愛新覚羅王女の悲劇
   川島芳子の謎
著者:太田 尚樹
発行所:講談社
発行年月日:2009/1/30
ページ:367頁
定価:1900円+税

愛新覚羅家というのは清朝の一族。元々清朝というのは内蒙古・満州を基盤とする遊牧民の一族でジンギスカンにも繋がる一族。ここに登場する川島芳子は「男装の麗人」ときには「東洋のマタ・ハリ」「東洋のジャンヌ・ダルク」とも持て囃された。清朝最期の皇帝溥儀の一族に生まれた。

日華事変の前の中国、満州は動乱の中にあった。中国では国民党、共産党、それに各地に軍閥たちが興っていた。そんな中、満州に五族共和の国を作ろうとした関東軍、大陸浪人たちを共に行動をして清朝の復興を願いに動乱の満州・中国を舞台に活躍した金壁輝(きんへきき)、日本名川島芳子の運命に翻弄された悲劇の歴史を描くと共に、ミステリアスな最期の謎に迫るドキュメント風の物語です。

一九四八年春、「漢奸」の汚名を着せられた川島芳子は本当に北京で「銃殺」されたのか?戦後生存説も飛び交っており、彼女の死は謎に包まれている。その謎に挑む作品となっているが、ちょっと迫力に欠ける感じがした。ただ彼女が生きて表舞台に出て来ると日中戦争の隠された裏の事実がもっと詳しく判ってくるような気がする。関東軍の諜報活動で、国民党、共産党、軍閥などに活動費としてかなり大きな資金を提供していた。中国軍といっても一枚岩だった訳ではないし、日本軍にしてもそれぞれがそれぞれの思惑で勝手に行動していた。そんなところが垣間見られる。