書名:大江戸えころじー事情
著者:石川 英輔
発行所:講談社
発行年月日:2000/11/25
ページ:335頁
定価:1800円+税
現代の日本は1日1人あたり原油換算で11.5リットルエネルギーを消費している。11万7500キロカロリー。10万キロカロリーというのは摂氏0度の水1トンを100度に沸騰させることが出来る熱量。アメリカは日本の2倍、OPEC加盟国平均1.2倍。湯水のようにエネルギーを使って一方通行の鉄路を走る特急電車のようにどこに向かって走るのか?向かっている方向は正しいのか?
昭和30年代に所得倍増、経済大国、経済経済を目標に舵を取ってきた方向が果たしてまともに評価できるのか?
260年続いた江戸時代、世界の列強の世界制覇の意図を読み取って中国、朝鮮、一部のヨーロッパ以外とは国交を遮断した鎖国政策。先人達の知恵に学ぶところもあるのではないか。江戸時代の先人の智慧をもう一度振り返ってみるのもいいのではないか。
当時江戸の人口は約110万人、日本の人口は3000万人、米の生産量は3000万石=450万トン、1人1年間1石あれば足りた。そして主に太陽エネルギーを使った植物、動物、人間が手間暇かけて暮らしていた時代。エネルギー消費量も今の1/100以下。勿論ゴミも汚染もない。利用的な循環型社会(逆にそんな暮らししかできなかった)したがってとても不便。手間暇をかけないと生きていけない。(しかし手間暇かけれが生きていけた)継続可能な社会を幕末の頃には完成していた。化石燃料を指数関数的に消費して後どれくらい100年200年単位で無くなってしまうことが予想される時代になっている。
江戸時代は山や森など木々を木炭、薪などにして消費するが、伐採した以上に次々と太陽エネルギーを吸収して育ってくる。江戸時代は低成長時代、封建的で庶民の暮らしは人間以下だったといって馬鹿にする。そんな教育を受けて戦後育った世代。そんな馬鹿な社会だったら260年も続かない。何しろ支配者階級といっても武士が5%、その他の95%が黙っていた訳がない。ソ連の共産党が強権をもって住民を監視して共産主義を徹底させても70年も経てばやっぱり崩壊するしかなかった。江戸時代は不便だったかも知れないが、それなりに生きて行くには良い世の中だったのではないか。記録に残るものは普段でないもの、飢饉などもたまにはあったかもしれないが、それは異常事態だった。西洋式の資本主義が絶対のものと考えていると柔軟な考えは出てこないと思う。かといって昔の不便な生活に戻れというのでもないが、江戸時代の人々の生き方を学ぶのも必要だと思う。
昭和30年代を知っている人にとってはこの本はすんなりと入ってくる内容だと思う。戦後70年の間に急激な大変化の中を生きてきた世代だと思う。過去の例が参考にならない。規範がないので自由だったもしれないけれど。自由なわりに何も考えずただ世界の潮流に流されていただけだったかもしれない。
昭和30年代から始まった集団就職、出稼ぎ、東京へ東京へと人は流れる。お金を求めてそして今は国際化の時代若い人達はどんどん外国に出稼ぎにいかないといけない。(多分旅行のような遊びは楽しいけれど)国内では食べていけない。小学生でも鬱病になる時代。こんな時代と江戸時代どちらがよかったのか?この本を読むと考えさせられることが一杯あります。
本書より
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洗濯のような無駄な作業に時間をかけず、自動式の電気洗濯機を使って余った時間より有用で高尚なビジネスや趣味、芸術のために使えば、人類がさらに発展する。という理論はわかりやすく、そういう発想のもとに文明が大発展した。
だが、人間は、物質的に豊かでひまになればなるほど精神的にも向上するほど立派な動物でないことが次第にわかってきた。文明の発展に平行して、それまでは考えもしなかったようなややこしい社会問題が次々に起こり始めたからだ。豊かなエネルギーは、水や空気だけでなく人間も汚染するのだ。
「正法は奇特なし」「科学は軌跡を生まない」