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本に出会う

とっぴんしゃん

書名:とっぴんしゃん(上)
著者:山本 一力
発行所:講談社
発行年月日:2011/11/17
ページ:255頁
定価:1400円+税

書名:とっぴんしゃん(下)
著者:山本 一力
発行所:講談社
発行年月日:2011/11/17
ページ:253頁
定価:1400円+税

山本一力の初めての児童文学。宇治茶を将軍に献上する茶壺を運ぶときのうた「とっぴんしゃん」を題名にした作品です。8歳から11歳位の子どもたちが主役で門前仲町と冬木町の子どもたちによる「技比べ」いまでいう運動会。

俵運び、綱引き、リレーなどを町対抗で行う。その技比べを通じて子どもたちが江戸っ子としてのわきまえを学び取って成長していく過程。大人との会話の仕方のけじめなど大人も真剣に子どもたちに立ち向かっていく。昭和30年頃までは残っていた街々の子供大人、おじいさんなどの関わり、どこか暖かく懐かしい風景が見える作品です。こどものつとめ、大人のつとめを確りと区別して描かれている。昨今の教科書よりずっと勉強になるように思う。

子供は世間が育てるのですね。親、家族だけでは育たないということがよく分かる。技比べのようなお遊びいっけん無駄なことのようなものに大人も子供も真剣に取り組む、勿論町中の人々もそんな中に大切な宝が転がっている。そんなことを教えてくれる。経済至上、効率一辺倒では出てこない人情ばなしなかなか面白い。毎日小学生新聞に連載された作品を加筆訂正したもの。家族で読むのもいいのでは。

「ずいずいずっころばし ごまみそずい 茶壷に追われてとっぴんしゃん 抜けたらどんどこしょ 俵のネズミが米くってチュウ チュウチュウチュウ おっとさんが呼んでもおっかさんが呼んでも行きっこなしよ 井戸のまわりでお茶碗欠いたのだあれ」

本書覚え書き
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江戸の通貨
金貨 単位は両・分・朱で1両=4分 1分=4朱
銀貨 重さで価値が決まる。1匁=10分 1分=10厘
銭  寛永通宝1枚1文 10000枚で1貫

3種類の交換比率は毎日の相場で決まる。
1両=銀60匁=銭4貫~6貫

現在の価値はお米を基準に考えると
 1文=9~10円 1両=5万~6万円 
職人の手間賃を基準に考えると
 1文=40~50円 1両=30万円