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「環境」都市の真実

書名:「環境」都市の真実
   江戸の空になぜ鶴は飛んでいたか
著者:根崎 光男
発行所:講談社
発行年月日:2008/12/20
ページ:206頁
定価:836円+税

昨今の環境問題を語る上で少し江戸時代を誤解して褒めすぎているきらいがあると、江戸時代について著者が調べた例を挙げて、江戸時代には環境ということを考えた施策、行動があったわけではなく、そうするよりしかたがなかった。結果的に循環リサイクル社会になっていたと主張している。江戸の空に鶴が飛んでいたのも、実は将軍の鷹狩りの獲物として江戸近郊の狩り場で鶴を飼育していた。

自然の鶴が飛んできていたのではない。また江戸の町はゴミの処理に大変困った社会だった。永代島に町のゴミを集めて船で捨ていた。そして今のゴミ収集と同じようにゴミを出す日決めていた。そんなゴミ収集システムを作っていたが、それでも大川、町の空き地などにゴミを投棄するする人が絶えなかった。急速に拡大した江戸の町の一つの現象で、自然の浄化作用が間に合わない程の人口になったこと。また都市が持っている本質というものも垣間見られる。しかしこのゴミを収集する船を各自で出すか、役所が船を用意するかということを町年寄りを通じて各町の名主達に意見を聞いている。それ以外のことでも武士が勝手に決めるのではなく、必ず民意を聞いているそのあたりは今よりも民主的な面もあった感じがする。

古着、古鉄など使えるものは徹底して使い切るという実践はただ貧乏だったからだけではなく、日本人の意志というものがあったように思う。修理しやすい物を作る。「直して」使う。「勿体ない、もったいない」ということが徹底している社会。今の使い捨てとは方向が全く違う。このあたりは先人に学ぶところもあるのではないか?そんなことを感じました。