記事一覧

本に出会う

貧農史観を見直す

書名:貧農史観を見直す
著者:佐藤 常雄・大石 慎三郎
発行所:講談社
発行年月日:1995/8/20
ページ:177頁
定価:660円+税

貧農史観というとはじめて聞く言葉かもしれませんが、 江戸時代の農民が搾取され悲惨な生活を送っていたという歴史観のことで、 明治政府が明治維新後の市場社会を正当化するためにあえて作り出されたもの。これは時の権力者が以前の社会を徹底的に悪くいうことに寄って、自分たちを正当化する常套手段ですね。この本はそんな貧農史観に一石を投じている。

農民の年貢負担は、六公四民、五公五民、四公六民など、一般に年貢率で表される。検地で設定された「村高」の負担率を表している。この「村高」は江戸時代を通じてほぼ一定で、新田開発、四木(茶、漆、桑、楮)三草(麻、藍、紅)その他駄賃稼ぎ、織物、野菜などは含まれていないので、実際の年貢負担率は10%~20%位と言われている。幕末に近づくほど米の値段が下がってきているので、貧農どころか富農が多くなって来ている。また生産力も江戸時代後期の生産力と昭和の戦前と比べても殆ど変わっていない。武士の中級役人より収入は多かった。

いままで教えられていたこととは違うことが一杯書いてあります。また江戸時代の方が地方(藩)が自立していて各藩ごとに名産品、殖産興業が盛んで江戸一極集中はしていなかった。また武士が独裁で強権を発動していたとは思えない。一般庶民の声を聞くこともやっていた。わかり易く書かれてある。なかなか良い本です。