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極北クレイマー

書名:極北クレイマー
著者:海堂 尊
発行所:朝日新聞出版
発行年月日:2009/4/30
ページ:436頁
定価:1600円+税

『週刊朝日』大好評連載小説の単行本化。赤字5つ星(ファーノース・ホテル、極北市民鉄道、北の大地遊園地、極北山スキー場、そして極北市民病院)の極北市民病院に赴任した外科医・今中を数々の難局が待っていた。「崩壊する地域医療」の現場を役所と病院の双方から描くという意欲的な作品。厚生労働省や天下り団体への痛烈な批判が多い感じ。北海道のある市と病院がモデルのように思われる。

不衛生でカルテも揃っていない。記載もずさん。研修医の後藤は仕事をしないことを常としている。病院長と事務長は対立しているし、市長と病院長とも犬猿の仲。一人良心的に緊急救急医療を行っている産婦人科医三枝部長は医療事故で刑事責任を問われて逮捕されてしまう。日本全国各地で地域医療の破綻を救えるのは誰か?極北市は財政再建団体に指定される。破綻が確定した極北市民病院に救世主(倒産病院の再建のプロ)が現れて物語は終わる。

最近はやりになった第三者による評価制度。この物語の中でも「病院機能評価」を厚生省の天下り団体が行うシーンが描かれているか?誰のための制度か、破綻寸前の病院にとってメリットがあるのか疑わしい。

本書より
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「地獄の逸話をご存じですか。地獄にはご馳走がたくさんあり、長い箸が用意されている。それは長すぎて、自分の口には入れられない。だから亡者たちは、目の前に食べ物があるのに、飢えて争う。これが地獄です。そして天国は地獄の隣にある。天国にもご馳走がたくさんあり、地獄と同じように長い箸が用意されている。そう、天国は地獄とまったく変わらない」

「天国では、長い箸で他人を食べさせてあげている。そして、自分も他人に食べさせてもらう。地獄の亡者は自分のことしか考えない。だからご馳走を前にしても飢えて争う。医療崩壊を騒ぎ立てるのは、刺激ばかり求めてさまよう地獄の亡者が成す宿業だ。私たちはみんな天国にいる。ただ気付いていないだけだ」

「メディアはいつもそうだ。白か黒かの二者択一。そんなあなたたちが世の中をクレイマーだらけにしているのに、まだ気が付かないのか。日本人は今や一億二千万人、総クレイマーだ。自分以外の人間を責め立てて生きている。・・(略)・・・・何と傲慢で貧しい社会であることか」