書名:道徳という土なくして経済の花は咲かず
著者:日下公人
発行所:祥伝社
発行年月日:2004/03/25
定価:1,600円+税
普通、経済というと人間的側面を極力排除して語られることが多いが日下さんの話はいつも生きた生身の人間の営みを考えている。所詮人間社会の営みに過ぎない経済を過大にも、過小にも評価しない公平さと冷静さがある。社会に寛容と余裕の必要性を一番にあげている。グローバルスタンダードはユダヤ社会の規範。日本のような歴史のある国に入り込もうとすると、ルール、公平、公開を要求しているに過ぎない。郷にいれば郷に従えと言っていた世界観がある日突然、あなたの所は私たちにとって都合の悪いルールがある。これは世界と違うのだから改めないといけないと言ってくる。その口車に乗せられて喜々としている人々の一団がいる。外国を例にとることが正しいことと言っているそんな人についていくと日本は本当におかしくなってしまう。政治家が適当でも、阪神大震災が起きても暴動、商店への暴力行為も起こらない日本。定期券を落としても大抵戻ってくる日本。実はアメリカなどと比べても20年先を言っている。このことをしっかり認識して置かないといけない。その上で良いところ、悪いところを明確にすべき。何でも良いところばかりではないし、悪いところばかりではない。マルクスの経済学では悪しき資本家がいて、労働者という対立的概念を頭の中で作って、労働運動などを煽ってしまったところがあるが、じっくり見渡してみるとどうも日本は違う。ケインズの経済学でもない。「恋愛と贅沢と資本主義」を現したヴェルナー ゾンバルトに近いのでは?
その上に社会が落ち着いているベーシックなところに道徳がある。そんなことを非常に判りやすい言葉で説明してくれる。この本もやっぱり5年前に発行されているが、今でもこれから先も通じる本だと思う。この本は2回目だが読む度に新発見のあるのが日下さんの本です。優しい言葉で普遍的な原理を説いているところが良いと思う。
本書(まえがきより)
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道徳と経済は不可分の関係にある。一国の経済を成り立たせているのは、そこにいる国民である。何のために働き、何を大事に考えているのか、裏切っていけないのは誰なのかといった目に見えない規範をもって暮らしている人間たちが、経済を作り出している。・・・・中略・・・覇権国家の衰退・滅亡の原因には「道徳の低下」があった。