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本に出会う

戻る男

書名:戻る男
著者:山本 甲士
発行所:中央公論新社
発行年月日:2010/6/25
ページ:266頁
定価:1500 円+ 税

以前発売した作品がベストセラーになって、その後スランプで作品が書けない。離婚もしてしまった一発屋の作家新居航生に突然届いた、タイムスリップの案内状。詐欺だと疑いながらその誘いに乗って見ようとする。過去にタイムスリップしてやり直したい出来事を思い浮かべながら、タイムスリップの誘いをかけてきた八木に会う。1回目は費用は50万円、あなたの生きたい過去に行く事できるということで、高校時代にいじめられっ子だった。その原因となるある出来事の起こる少し前にタイムスリップする。

そこでいじめっ子に喧嘩を仕掛けて、その後虐められないようにして戻ってくる。その次は昔つきあっていた女にこっぴどく振られたこと。その時に戻って、先に振ってしまう。2回目の費用は100万円、そして3回目は小学校の時自分の遊んでいた池の端で女の子が溺れて、何も出来ないままその子が溺死してしまった。いまでもトラウマになっている思い出。その前に戻って女の子を助けてくる。3回目の費用は500万円。そしてそれらの経験をしながら、本当に過去を変える事が出来たか?当時の友人関係者を負いながら調査をしていく。すると自分と同じ経験した人が数人出てきた。そしてそれらの人々は八木(人によって名乗りを変えている)に感謝しているし喜んでいる。
本当にタイムスリップが出来るのか?に疑問をもった新居航生は執拗に調査する。そして分かってきた事は?そして過去を変えることが果たして幸せか?自分の過去があるからいまの自分があるという当たり前のことを新鮮な思いで見つけ出す。山本甲士特有のほんぼのとしたハッピーエンドで終わる。そして深い余韻を残しながら考えさせられる。

山本甲士は佐賀市在住で、年に3冊ほどのペースで本を書き既に30数冊を出版している作家です。