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ハッピーバースーディー命かがやく瞬間(とき)

書名:ハッピーバースーディー命かがやく瞬間(とき)
著者:青木和雄、吉富多美
出版社:金の星社
発行年月日:1997/12
価格:1300円+税
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命って、生きるって何ですか・・・・・
「おまえ、うまれてこなきゃよかたよな。」十一歳の誕生日、ママと兄のひと言から、あすかは声をなくしてしまう。祖父母の愛と自然の中で回復したあすかは「自分は自分として生きる」と強く心にちかった。でも問題はあすかだけではなかった。小さいときの傷から、あすかを愛せないママ、両親のいう通りの人生に、疑問を持ちはじめる兄・直人。そして、あすかを待ち受けていたのは、大好きな祖父と親友めぐみとの永遠の別れだった・・・・・。
泣き尽くし、癒されたあと生きる勇気がわいてくる物語
  (本書本文より)
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 突然、「おまえ、うまれてこなきゃよかたよな。」で始まる物語、一瞬どきんとさせられる。声をなくして学校でも家庭でも喋ることが出来なくなってしまったあすかが、祖父母の元へ、祖父と祖母の「先が短いとあせっても、たっぷりあるとのんびりしても、時間の長さは変わらないんだ。同じことなら、せめて気持ちはのんびりといこうじゃありませんか、おじょうさん。」という会話。ゆっくり暖かくあすかを見守っている姿が伝わってくる。「どんなにつらいことや悲しいことも、いつかは流れていく。時間にとらわれてはいけないよ。次にくる楽しい時間をみうしなってしいますよ。」悲しいときには思い切り泣き、楽しいときには思い切り笑う、自分の感情に素直になって表現していくことで段々自信をつけていくあすか。子供の成長する姿が描かれている。
 泣きたいときになけない。笑いたいときに笑えない。怒りたいときに怒れない。常に自分とは別のもの、両親であったり、学校の先生であったり世間であったりと外部のことを気にして自分を見失う。そんなストレスを抱えこんでいたあすか、自分の感情に素直になることで「生まれてきて良かった」と強く生きる姿を描いている。今の子どもたちにとっては一つの応援歌ではないかと思う。明日に希望を与えてくれる一書だと思う。