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大正昭和 激変の庶民生活史 長津田のあゆみ

書名:大正昭和 激変の庶民生活史 長津田のあゆみ
著者:長津田を語る会
発行所:大命堂
発行年月日:1978/6/10
ページ:241頁
定価:1400 円+ 税

昭和53年頃に出版された本です。昭和15年都筑郡田奈村長津田が横浜市に合併されて横浜市港北区に編入された。その後昭和44年緑区に分区、私が長津田に住み始めたのは昭和46年、当時街の家の表札には港北区が残っていた。警察署も川和警察署(昭和48年緑警察署に)。昭和の激変は全国各地で起こっているが、横浜郊外の長津田でも急激な変化を大正時代、昭和前半、戦後と当時を生きた人々の記録を「長津田を語る会」140余名の規模で詳細かつ簡潔にまとめられている。これはこの地域の小学校の歴史教育に是非入れておきたい良書ではないかと思う。

昔の古老から先人の話を聞いて地域を知るという当たり前のことが忘れられた現代、どこの地方でもこのような本を残していくことも必要ではないかと思う。懐古趣味ではなく、世の中の動きと自分たちの出来事、当時あった植物、動物、絶滅してしまった植物、動物など。農業の変異、ため池を作った話、その後ため池を埋めて話。昭和28年の大火災によって水道が導入された話、高度成長期に住宅建設に土地を供給した農家がどこも一番に行った自宅の新築の話。多岐にわたって生活に密着した分野も漏れなく盛り込んである。講の話はとても面白い。大山詣ばかりではなく、身代わり不動、秋葉神社など民間信仰が残っている。大きな街ではないけれど、探っていけば先人たちがそれぞれの思いで必死に生きてきた記録がここにあるという感じです。

大山街道の宿場としてよく言われているが、実は矢倉澤往還北条小田原への道、北条氏の関東支配の重要な街道、その後江戸時代後期に大山詣が流行して大山街道、明治には長津田周辺も軍事訓練場の一つとして利用された。兵隊さんの通る道として、青山街道、246号この道の歴史だけでも面白いものがある。この長津田に15年住んでいた事があり、ちょうどこの本に書かれている時代の後半を目撃しながら暮らしてきた私にとってはわかりやすく地理感もあり、具体的によく分かるし、当時殆ど知らなかった事が納得できることが多い。

また井上さん、久保田さんなどと具体的に名字も出てくるので昔から住んでいた人たちが分かる。この本にもあるけれど昭和53年頃でも戦前住んでいた人の子孫は人工の2%いかになっている。それ以外は他から移ってきた人。横浜市のどこでも同様に、昔からの人は極端に少ないが、やっぱりこんな歴史を記録した本があると地域の理解も早いし、地元意識ももてるのではないかと思う。街おこしの一番最初は地域の歴史しっかりと勉強すること。それには正確な情報をまとめておく事。

この本はそういった意味で手本になるに思う。これを企画した人に感心する。それもただ証言集ではなく日本、世界の歴史の中における長津田という視点もきっちりとつかんでいる。何でも章ごとに何回も会議を開いて校正を繰り返しているとのこと。郷土史家などがまとめている地域の歴史ではなく、何人もの人が関わっている迫力があります。そして説得力がある。学者では書けない良い本です。30年ほど前に長津田の本屋さんにおいてあったのを買って、書棚の片隅に置いてあった本です。横浜市の図書館にもあります。

人がいるところに歴史あり、それを自でゆく感じです。

1939年横浜市に合併港北区
1969年緑区
1994年緑区、青葉区、港北区