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遺跡が語る 東京の歴史

書名:遺跡が語る 東京の歴史
著者:鈴木直人、谷口榮、深澤靖幸
発行所:東京堂出版
発行年月日:2009/9/20
ページ:273頁
定価:2500円+税

遺跡というと旧石器時代、縄文時代、弥生時代、古墳時代あたりが思い浮かぶが、この本はそれ以降の中世、近世、明治、大正の遺跡などを網羅している。東京都に限っているのでちょっとその時代の人々の生活、勢力圏内とは違っている感じもするが、いまの東京の歴史を知るには面白い。現在の東京23区の殆どは遺跡は少なく、高台部分(多摩川沿い田園調布、上野毛など)貝塚が海岸沿い、しかし仮の住まいとしていたようだ。

縄文時代、弥生時代、古墳時代そして奈良時代あたりまで多摩地区、山岳周辺地域の遺跡が語ることは奈良時代あたりで一度その住まいは廃棄されている。どうも大和王朝の勢力が官僚を派遣した頃から、そのあたりに住んでいた人たちは何処かに移住したようだ。大和王朝によって蝦夷が東北の方へ移住していった軌跡と合っている。仮説の域は出ないが、東京に住んでいた人々が大和からの人と入れ替わっている。そんなことを遺跡は語っている。

土地の開発が頻繁で東京の遺跡はどんどん現れてくるので、これからも面白いものが出てくるかもしれない。東京の遺跡とシームレス地質図3Dの高台と重なるのは偶然ではない。古代の人々は自然を征服しようとはしなかった。したがって高いところ、災害に強い地域を選んでいた。当たり前の事実を示してくれる。近代的な人工物で安心していてはいけない。そんなことを考えさせてくれる。

シームレス地質図3D
http://riodb02.ibase.aist.go.jp/db084/3d/