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日本を追い込む5つの罠

書名:日本を追い込む5つの罠
著者:カレル・ヴァン・ウォルフレン
訳者:井上 実
発行所:角川書店
発行年月日:2012/3/10
ページ:236頁
定価:940円+税

いまのアメリカは10年前と比べてきわめて急激な変化が起きている。国のあり方が一変してしまった。アメリカの民主主義は弱体してしまった。新自由主義がはびこって、わずか1パーセントの人間に巨大な政治権力ととてつもない富を与えてしまっている。いままでの民主主義の国では無くなってきている。金融業界、巨大企業、軍隊などをアメリカ政府はコントロール出来なくなっている。そんな中、日本に忍び寄る日本の本当の危機を直視しなさいと本書は5つの罠を警告している。

アジアを搾取し、アメリカ経済すら破壊するTPP、1パーセントの人間のための政策、アメリカ市民すら貧困のどんどこにする愚策。「財政緊縮」を行って立ち直った国は過去に一つもない。EU危機で叫ばれた「財政緊縮」、ギリシャはその犠牲者、統一通貨ユーロを作って、各国毎に国債を発行させている不可思議?信用格付け会社の嘘に翻弄される世界経済の愚。「国家なき国」の犠牲となり続ける沖縄の基地問題、世界の権力地図、激変!(アメリカの弱体化、世界の紛争解決能力を喪失したアメリカ)主体無き日本は遅れをとる。

1970代から日本に住んでジャーナリストとして活動してきた著者の冷静な目で見た現代の問題点を厳しく挙げている。なかなかユニークな見方が多い。最近日本に見られる「なってはいけない人がリーダーになってしまう不思議」日本の機構の中には権限がない。つぎつぎたらい回し、決められない。この現況は実は権限がはっきりしていないことによる。権限を持っている人は誰かが全く分からない。良い悪いは別にしてこれが日本の組織の特徴。権限がないのだから誰も責任をとらない。

市民、国民の声が政治に届かない、もどかしい思いを抱いている人が多いのでは、実は選挙で選ばれた人というのはお金で選ばれた。アメリカの大統領選挙にどれだけのお金が掛かるか?オバマが銀行業界から莫大な資金の提供を受けたから、倒産して当然の銀行を生き残らせた。株式会社は従業員、一般株主の意向ではなく、ごく一部の株主の意志で決まる。政治は民主主義で決まるのではなく、お金で決まる。こんな風潮が顕著になってきた。TPPもやっぱり同じ。誰が得をするか?で決まる。本当は徳で決まると言いたいが。新鮮が視点があって面白い本です。