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ぼんち

書名:ぼんち 山崎豊子全集
著者:山崎豊子
発行所:新潮社
発行年月日:2004/02/10
定価:4935円

 足袋問屋の女系家族の後をとった一人息子「喜久治」がぼんぼんからぼんちに変わって行く様子と大阪商人独特の言葉、習慣などを盛り込みながら大阪と商人を描いた作品。江戸っ子は宵越しの金は持たないと粋がっているけれど、江戸っ子は一晩で使い切る懐金しか持たず、大阪商人はとても宵越しに使い切れんほどたんと銭をもっていた。江戸しぐさと比較しながら読んで見ると商業都市大阪の文化、習慣と江戸との違い。また桁違いの富を持っていた商人の一面を眺めるのも面白い。
 明治、大正、昭和の大阪商人の歴史、風俗としての資料としてもよく調べて書いている。山崎豊子の作品はちょっと計算されすぎているのでどこかイヤミがある。感心はするけれど感動を与えられない小説が多い。人間を描きながら心がすーと入っていかないもどかしさがある。策士策に溺れるところがあるような気がする。

本書より
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大阪では、良家の坊ちゃんのことを、ぼんぼんと言いますが、根性がすわり、地に足がついたスケールの大きなぼんぼん、例え放蕩を重ねても、ぴしりと帳尻のあった遊び方をする奴に「ぼんち」という敬愛をこめた呼び方をします。