書名:評伝 出光佐三 士魂商才の軌跡
著者:高倉 秀二
発行所:プレジゼント社
発行年月日:1990/10/27
ページ:582頁
定価:
「海賊とよばれた男」がベストセラーだとか、出光佐三が主人公。それ以前に本書は出光佐三の生きていたときに書かれていて、出光佐三についてはバイブルと呼べる書です。
出光興産のモットーである「人間尊重」「大家族主義」「黄金の奴隷たるなかれ」「生産者から消費者へ」「士魂商才」、すなわち、「志は高くともしっかりそろばん勘定もする」という姿勢も、「黄金の奴隷たる事勿れ」(1)クビ切りがない。(2)定年制がない。(3)出勤簿がない。(4)労働組合がない。という常識を破る「四無」主義、これを一生かけて貫いた出光佐三の生涯を描いている。
国際石油資本と日本の石油業界の中にあって異端児、常識外れ、愚直なまでに初志を貫き、大手海外資本を向こうに回し、財務諸表より人を大切にした実業家。生産者から消費者へ「大地域小売業」を行うには運転資金の確保に血のにじむような努力をしている。そしてどうしょうもない苦境に陥ったときには必ず、出光佐三を信用して救いの手が差し伸べられる。奇跡を見る想いです。
終戦のとき、事業の大部分を海外に依存していたため、すべてゼロ、残っているのは復員していない1000名の社員。その社員を一人も首にせず、仕事を作っていく。出光教と揶揄されることもあるが、出光は石油業というのは人を作る、育てる、修行させるための方便。人が残っていれば何とかなると再出発に挑んでいった。石油ショックになってもビクともしない。財務諸表より人を大切にした。
現代ではブラック企業を呼ばれるかもしれないが、本来の仕事とは何かを考えると絵に描いた労働基準法の規則で規定出来るものか?仕事とは何かを考えさせてくれる一書だと言う気もする。
「難にありて人を切らず――快商・出光佐三の生涯」(2003年PHP出版社、水木楊著)
「出光佐三――黄金の奴隷たるなかれ」(2012年ミネルヴァ書房、橘川武郎著)
「出光佐三 反骨の言魂」(2012年PHPビジネス新書、水木楊著)
「出光佐三語録」(2013年PHP文庫、木本正次著)など。