書名:正義で地球は救えない
著者:池田清彦 養老孟司
発行所:新潮社
発行年月日:2008/10/25
定価:1000円+税
100年ほど前から化石燃料の時代が始まった。今騒がれているCO2が地球温暖化の原因説。データを整理すると日本の排出量は4%、アメリカ、中国の排出量は40%、その4%を2050年に半減するという目標。全体に寄与する効果は?癌で死にかかっている人が水虫の治療に躍起になっているような図式。こんなことに騒いでいるのですよ。取るに足りないことでは石油は有限な資源、限りある資源で2100年頃にはこのまま使って行けば無くなってしまう。また少々削減したところで4,5年遅くなるだけ。こんな単純なことを判らない人達がミクロのCO2削減(これさえすれば全て旨くいくような風潮)を議論している。またCO2の大半は電力会社から、消費者がいくら節約しても、最大供給量を発電しているシステムだから、消費者の削減分がそのまま削減できるわけではない。(勿論一人一人の削減努力、資源を大切にすることには異論はないけれど)
今すぐ石油に変わる代替えエネルギーに転換出来るのであれば良いけれど、石油を削減して出来ることは経済の規模を縮小すること。段々生活が出来なくすることに繋がる。簡単にいうと経済規模を半分にすればCO2の削減は達成出来ることになるけれど、それで何も解決しない。68億人が益々食べられなくなるだけ、CO2削減のため(排出権、対策予算)何兆円もの税金を使わないと行けなくなったのは京都議定書を批准した政府の責任。カナダのように政権政党が変わったのだから、前の政権がやったことと居直って脱退するのが一番良い方法かも。でも民主党は今まで以上に入れ込んでいる。期待できないね。
でも本当に必要なのは今何とか豊富にある資金、石油を使って50年掛けて代替えエネルギーを開発することが重要であり、また世界の人口68億人をこれからの代替えエネルギーで食べられるだけの人数に減らす方策を考え、合意して実施していくこと。ではないか。このままでいくと石油が無くなるときは、戦争暴動で人が減ることになる。今生きている人を殺すのではなく、これから少子化どうすすめていくか?これも重要な課題になってきている。以外と日本は省エネ、高齢化、少子化これからの世界の流れの一番先頭にたって試行錯誤しているのかもしれない。
明治時代の宇部興産の創始者渡辺祐策が石炭は有限のものだ。掘っていればやがて尽きる。だから石炭を節約するのではなく石炭のある間にその富で無限の技術に転換しなければならない。と言っている。
アングロサクソンが軍事力で植民地支配(特に東洋)が出来なくなってきたので、反捕鯨運動、禁煙運動、CO2削減運動、環境保護、自然保護と暴力ではなく、ソフトな言い方でグローバルスタンダード原理主義をどんどん押しつけている。それの片棒を担ぐのが日本の今後の行き方か?ミクロの視点ではなくマクロの視点で日本の決断が必要な時が今ではないか?
たばこには健康に関する注意書きがあるけれど、ハンバーガーには「ハンバーガーを食べることはメタリック症候群、ひいては糖尿病、最終的には心臓血管系の障害を引き起こします」とは書いていない。どんなものにもメリットデメリットがありそれぞれの多様性があることを許容していかないと今のようにミクロの問題でぎくしゃくしたことになる。アングロサクソンの原理主義は中東の原理主義より資金力と軍事力、政治力があるので怖いということを知っておかないと偉いめにあう恐れがある。
池田清彦氏は生物学者で非常にユニークな方、視点に多様性があって面白い。でもこんなことはメジャーなマスコミは少しも伝えない。みんなと違うことを許さない社会は中国、北朝鮮よりも怖い。養老孟司氏との対談も面白い。養老氏もやっぱりみんなと違う人。正義ということばを聞いた瞬間にうさんくさいと思わないといけない。
本書より
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「家は大きくなったが、家族は減った。
どんどん便利になったが、余暇は減った。
学位は取ったが、感性は鈍った。
知識は増えたが、判断が出来なくなった。
専門家が増えた分だけ、問題も増えた。
薬が増えたが、健康だと思う人は減った。
月まで行って帰ってくるが、向かいの人に会いに行くのに
道を横断するのも大変になった。
量は増えたが質は下がった。
背は高くなったが、気は短くなった。
大儲けは出来たが、人間関係は疎遠になった。
窓にはたくさんのものが飾ってある時代だが、貯蔵庫は空っぽだ。」
ダライ・ダマ十四世の言葉
現代は他人の楽しみを邪魔する楽しみに、人が目覚めた時代(奥本大三郎・仏文学者)