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人間としてどう生きるか

書名:人間としてどう生きるか
著者:渡辺 和子
発行所:PHP研究所
発行年月日:2003/2/28
ページ:305頁
定価:1600円+税

岡山のノートルダム清心女子学園にて37年間続けられてきた、著者の「人格論」の講義を収録した一冊です。著者は成蹊小学校3年生で9歳の時に、二・二六事件に遭遇。当時教育総監だった父(渡辺錠太郎)が青年将校に襲撃され、43発の銃弾で命を落とした。父の居間で1mのところで目のあたりにした。

この本は人生の意味を問う。
私たちは、一人の人間のかけがえのなさ、人の心がもとめてやまない愛、自由等について、さらに深く思いを傾けなければならない。それこそが、たった一度の人生というものを、輝かせるのである。人はそれぞれ得意なものを持っている。歌がうまい人、絵の上手な人、走るのが速い人でもそれは自分のものではない。与えられたもの、預かっているもの、それを大切にすること、得意がって威張る物でもない。人は平等であるけれど才能(タレント)はそれぞれ違う、それぞれの分に応じて役割がある。それを見つけることが人生の意味を知ることになる。

人生の指針を優しい言葉で懇切丁寧に説いている。人との会話でも、相手の言うことを私はこう理解しましたという態度、言葉を示すと、スムーズに会話が弾む。ギクシャクしない。若い人には是非読んで欲しい、人生論です。

本書より
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「礼儀と名前」を大切にしてほしいと、言っています。

「挨拶くらいとおっしゃる方があるんですけれども、私は、挨拶さえできない人に、なにができるだろうかと考えています。その意味で、挨拶という、今、日本の国から失われかけているもの、それに対してこだわりを持っております。(略)私自身が礼儀をわりにたいせつにするのは、礼儀は人間性というものと深くかかわっていると思うからです」

「ある方の研究によりますと、名前が好きになるということは、自分が自分を受け容れることにつながっているんだそうです。自分が嫌で嫌でしょうがない人は、自分の名前が好きになれないみたいです。いずれにしても名前というものは、その人を表すものとしてたいせつなものです」

なにかをなさっている時にフッと思い出して、「ああそうだ、これをあの人のためにしよう」と思ってください。それは、結局〝人格としての生き方・接し方〝という、他の動物にはできない私たち人間の特権だろうと思います。誰かのためになにかができる。