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女の勲章

書名:女の勲章 山崎豊子全集
著者:山崎豊子
発行所:新潮社
発行年月日:2004/03/10
定価:4935円

 船場を焼け出された大阪の老舗の羅紗問屋の長女式子が、4才下の八代銀治郎というマネジャー洋裁学校を大きくしていく、また自らはデザイナーとして成長していく過程を描いた作品。大阪弁を巧みに使った小説。山崎豊子としては初めての取材を全くしていない作品とか?パリの街並みの様子、スペインの街など地図とスライドを元に描いたとか?ちょっと人間が描けていないところもある。その後の改版で街の様子などは後の取材で変更したとの。
 大阪弁は商業語、やっぱり商売人に会っている言葉、標準語では非常にキツイ言い方をソフトに言いながら、質問、質問、そして納得させてしまう言葉を駆使している。大阪弁の効果を行かなく発揮しているように思う。ただ全国区ではちょっとにニュアンスが伝わらないところがある感じがする。

本書488ページより
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「人間のほんとうの気持ちなど、言葉に出来るものではありませんよ。愛情という言葉は、口にした瞬間から真実が消え、嘘になり、無意味になってしまいそうです、情熱は激しく燃えて消えてしまうものですが、愛情というものは、燃えずに人間の奥深くに、静かに変わらず育んでいくものです、それがほんとうに人を愛する心でしょう」
本書604ページ
「先生の最もお嫌いな銭の話になりましたが、式子さんは僕のかけがえのない財産でっさかい勘定のの合う清算をして貰わん限りは、きれいに引っ込めまえんから、大変失礼ですが、先生ものそおつもりで、お考えおきしておくれやす」