書名:風の轍
著者:岡田 秀文
発行所:光文社
発行年月日:2008/9/25
ページ:580頁
定価:2300円+税
越前一乗谷の城下で商い、越前随一と言われる商家「鍋谷」の娘・志乃は何の苦労もなく暮らしていた。新進の商家「池田屋」の次男の慶次郎と政略結婚させられそうだった。ある日、父宗右衛門が行っていた朝倉氏以外に武器などの抜け荷を行っていたことが、池田屋の密告によって発覚した。一族は処刑。命からがらふるさとを逃げ出す。慶次郎は事前に志乃に知らせようとするが、兄に捕まって屋敷に幽閉される。志乃は夜盗に襲われ、遊郭に売られて京都に住まう。
一緒に逃げて途中で別れ別れになった「鍋谷」の奉公人文吉は京都で手堅く材木商を営んでいた。志乃の行くへを探し続けていた。身分と階級、富と力が入れ替わらんとする戦国の世を生き抜いた女商人の波瀾万丈の半生。どこか戦国版「風と共に去りぬ」を思い起こす内容で、長編にも関わらず一気に読んでしまった。絶頂からどんどこへ、アップダウンが激しい志乃の人生、明日のことは誰にも判らない戦国時代をたくましく生きる志乃、そして遠くから静かに見守る慶次郎の対比が面白い。