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複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線

書名:複雑な世界、単純な法則
   ネットワーク科学の最前線
著者:マーク・ブキャナン
訳者:阪本 芳久
発行所:草思社
発行年月日:2005/3/3
ページ:342頁
定価:2200円+税

世界は何故狭いのか?「6人たどれば,世界中のだれとでもつながる」という「6次の隔たり」を聞いたことがあるだろうか?ダンカン・ワッツとスティーヴン・ストロガッツが提唱した「スモールワールド」と呼ばれるネットワークの研究が流行っている。一般的な社会やインターネット、神経系に至るまで、あちこちで普遍的にスモールワールドが見られるからだ。ここに何か世界の秘密があるに違いない。伝染病や噂話など情報やエネルギーの伝達、生態系の仕組みについてスモールワールドはどんなことを教えてくれるのか。現在進行中の物理学の世界を説明しようとした書です。物理学は還元的な方法でどんどん部分部分に分解してその組成、性質など解明してきた。しかしそれら個々を繋いでいる仕組み、ネットワーク、絆、構成などの複雑な仕組みには答えることが出来なかった。

「金持ちはますます金持ちになる」という貴族主義的なネットワークはハブ、すなわちコネクターが存在している。インターネット、ワールド・ワイド・ウェブ、AISに見られる性的接触に見られるネットワーク、引用で繋がっている科学論文のネットワーク、会社役員で繋がっているネットワーク、各公的な委員会で繋がっているネットワーク、英単語のネットワークなどは多くのコネクター(ハブ)が存在していてノート数が多い。しかしこれとは違ったスモールワールド・ネットワークも存在する。
平等主義的なネットワークには人間の脳のネットワーク、道路網、鉄道網、電力網、航空網など。それぞれ特徴があり、このネットワークの性質を理解、分析して複雑系の中から単純な法則を見つけようとする試みです。規則性を追い求めてきた物理学の世界からダンラム性へ。偶発と思えているものでもそこにはある規則性があるということを探る。歴史は偶発性、個人の行動は偶発性と思われているけれど実は規則性があるのでは?

選挙の予測、経済の予測など将来の予測などは出来ないこと。しかし個別の事象は無理でも傾向としの見通しはできるのではないか。貴族主義的なネットワークでは「金持ちはますます金持ちになる」10~20%の人に80~90%の富が集中する。自由にすればするほどごく一部の人に富が集中する。これはネットワークの特性。自由・グローバルが進行するとこれを益々加速する。と述べている。それを分配を考える上で課税は有効な手段。生物の絶滅についてもなかなか面白い見方をしている。1種の絶滅によって他の絶滅はどうなるか?ノードの多い個体ほど大きな影響を与える。1種類の餌(生物)しか食べない、数種類の餌(生物)を食べる。どれだけの生物を繋がっているかスモールワールド・ネットワークを構成しているかによって違ってくる。

1980年代に複雑系という概念が出てまだ30年、これからどんどん学問が進んで人間社会のネットワークの複雑な交わりを解き明かしてくれるかもしれない。今後を注目して見たい。