書名:愛と幻想のニュータウン ある整形外科医がみた風景
著者:齋藤 清人
発行所:悠飛社
発行年月日:2001/8/15
ページ:171頁
定価:1400円+税
仲町台さいとう整形外科の医師が、港北ニュータウンで開業からニュータウンの人間模様を見続けて感じたこと、体験したことを綴っている。特にニュータウンという環境が人間の心に影響を与えるか?崩壊寸前を予知させる現代社会の縮図をこのニュータウンと呼ばれる風景から鋭く示唆している。
港北ニュータウンは新しい街、高学歴者も多いし、高収入、若い街、希望にあふれる街というのは幻想だった。どこでも新開地、新興地は柄の悪い街、これが一般的でも東京近郊のニュータウンは違うと思われている。でもこの本の中に出てくる事例を読んでみると新開地と同じと言うことが判ってくる。
古い歴史のある街はそれぞれの人々がそれぞれの年代でそれなりの役割をもって、それに生き甲斐を感じて生きていた。しかしこの作られた街ニュータウンでは人はそれぞれ別々、この街に住む必然もなければ役割があった訳でもない。ただ偶然?ちょっとしたきっかけで住んだに過ぎない人々が描き出すとんでもない人間模様を描いている。
自分勝手な人々に驚き、怒りそして著者の慈愛の眼でニュータウン人間模様を鋭く描いている。これからの都市問題の全てが奥に隠れている。ハードウェアはそれなりに立派に、知識も豊富、学歴も収入もでも決定的に欠けているものがあるニュータウンの人間について深く考えさせられてしまう。土着の民が戦後遊牧の民となって大都会に漂流してきてニュータウンに住み着いてそして遊牧民にもなれず、土着民ともなれない中途半端のデラシネ、これからの社会はどんな社会になっていくのか?深く考えさせられる。なかなか面白い本です。