書名:プロメテウスの罠 明かされなかった福島原発事故の真実
著者:朝日新聞特別報道部
発行所:学研パブリッシング
発行年月日:2012/3/26
ページ:269頁
定価:1238円+税
法治国家の日本では、化学プラントで爆発火災事故を起こしたら、すぐに監督官庁が視察に入る。責任者は逮捕される。だが、福島第一原発事故は違っている。これだけの重大事故を引き起こしたにもかかわらず、誰一人責任をとらず捕まってもいない。それどころか、事故の検証も終わらず、多くの福島県民が放射能被害に苦しんでいるのも構わずに、経済産業省原子力安全・保安院と原子力安全委員会は何事もなかったかのごとく電力会社が提出したストレステストを「審査」して原発を再稼働させようとしてきた。もちろん、最初から審査結果はわかっている。原子力安全行政は完全に壊れている。
原発の隣接地域の住民は期間困難地域として自分の家にも入ることができない。ところが原発の労働者は強度の被曝環境で働いている。労働監督基準局の査察が入ったという話も聞いたことがない。5ミリシーベルト/年間以上でガンで労働者が死んだら労災認定が下りることになっている。今の労働環境は法律に違反しているのでは?
あまりにも遅い遅い朝日新聞の対応です。「朝日新聞のルポルタージュ連載記事の書籍化。福島原発事故による放射能汚染は、なぜこれほど多くの被害者を生んだのか。政府、官僚、東京電力、そして住民。それぞれに迫った、気鋭の取材記者たちの真実のリポート。 」と銘打っているが、何故2011.3の事故当時は政府と一緒になって「直ちに健康に影響がない」と言っていた。少し変わったのか?それとも他社がやり始めたからか?後になってしっかり纏めることも必要だけれど。それは学者でも出来ること。ジャーナリズムの本質とは違っているように思ってしまう。事実を淡々と公開していく真摯な態度が欲しかったように思う。
でもこの朝日新聞特別報道部の仕事はそれなりに評価できる。この本がなかったら朝日新聞の品格は落ちっぱなしだっただろう。今後もジャーナリズムとして自覚して自立してくれることを期待する。
プロメテウスの罠は全部で4巻で構成されているようです。これが最初の1巻目です。