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原子炉解体 廃炉への道

書名:原子炉解体 廃炉への道
著者:石川 迪夫
発行所:講談社
発行年月日:2011/4/15
ページ:341頁
定価:1900円+税

寿命を迎えた原子炉をいかに技術的に「安全で安価に」解体するか?ということについて日本初の廃炉、JPDRの解体作業に関わった全記録です。また世界の廃炉についても例を挙げて説明しています。
1963年に建造された日本原子力研究所の動力試験炉(1.5万ワット)は、1976年に停止し、その解体作業は約10年に及びました。放射能に汚染された、炉心、格納容器、建屋を除染・解体し、汚染が少ないものは廃棄、多いものは隔離して、放射能廃棄物の保管場所への移送と保管。解体作業中もさまざまなロボットの利用や放射線管理下での作業の管理など、その全工程は非常に長い時間と多大なる費用がかかる一大プロジェクトでした。総額200億円のプロジェクト。この原子炉は1.5万ワットと小さな実験炉でした。本格的な商用原子力発電所の廃炉となるともっと困難な作業となる。

この廃炉では放射能廃棄物の処理については放射能廃棄物の区分についても法的にハッキリ決まっていないこともあって、容器に保管するというところで終わっている。本当は保管場所は?という一番肝心のことが決まっていない。低レベル放射能廃棄物の保存先に六カ所村の「低レベル放射能貯蔵センター」建設中が例と示されているが、ここに第一段階(10~15年)、第二段階(第一段階終了後30年)、第三段階(第一段階終了後300年後)にわけて放射能廃棄物の監視、環境モニタリングのやり方を変えながら処分して、315年後には普通の場所として使用することが出来ると、非常に楽観的に見ているのが気になる。六カ所村の「低レベル放射能貯蔵センター」は永久保存先?300年は長いのか短いのか?法隆寺の例を出して1000年以上管理してきたと。本当!

この本は20年ほど前に書かれた本で、また原発を国策として強力に推進していた時代の東大の教授、その教え子が著書であり、廃炉も放射能をコントロール出来るし、300年以上保管することも可能と楽観的に書かれている。また放射性廃棄物と家庭のゴミを比較して量は家庭ゴミに比べて原発の放射性廃棄物は格段に少ない。そして危険ではないこと。コントロール容易と自慢げに書いてある。福島原発の総括が終わったときに結果が出てくるでしょう。この本は3.11以後急遽新版として発売された本です。

ただ、これから商用電力発電所の廃炉が始まるとき参考に出来る方法論が詳細に書かれている。概略原子力発電所の建設費の15%~20%の費用が廃炉にはかかる(核燃料廃棄物の処理は除く)とのこと。1基5000億円とすると750億円~1000億円の廃炉費用、50基で5兆円。

目次
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新装版まえがき
第1章 JPDRの廃炉のはじまり
第2章 放射能のありか
第3章 JPDRの廃止措置
第4章 問題は放射性廃棄物
第5章 廃炉費用とシステム工学
第6章 世界の廃炉プロジェクト
第7章 まとめ

付録1 JPDRの諸元
付録2 解体工法に関する技術開発
付録3 廃棄物の処理に関する技術開発
(JPDR=日本原子力研究所〔現・日本原子力研究開発機構〕の動力試験炉)