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クライマーズハイ

書名:クライマーズハイ
著者:横山 秀夫
発行所:文藝春秋
発行年月日:2003/8/25
ページ:421頁
定価:1571円+税

著者が上毛新聞記者時代に遭遇した1985年に起きた日航機墜落事故(御巣鷹山墜落)取材の体験を元に長編小説にまとめ上げた力作です。
物語の始まりはJR上越線の土合駅の描写からはじまる。下り線ホームは地下深くにあって改札まで486段の階段が続いている。魔の山「谷川岳」に登る人はこの土合駅の階段は懐かしい。一ノ倉沢衝立岩正面壁を登ると同僚安西耿一郎と約束をしていた前夜、日航機墜落事故は起きた。その深夜安西耿一郎はなぜか歓楽街でクモ膜下出血で倒れ、病院でも意識は戻らぬままであった。一方悠木和雄は日航機墜落事故の全権デスクとして取材陣のトップにたった。

登山家の同僚安西耿一郎には妻と息子燐太郎がいた。この燐太郎と一ノ倉沢衝立岩正面壁を登るところで日航機墜落事故(御巣鷹山墜落)取材の様子を回想風に綴っている。未曾有の大事故に決然と立ち向かう。新聞社内の面妖と言っても過言でない人間関係、ひりひりした緊張感体験に基づくリアル感は迫力がある、この「下りるために登るんさ」というキーワードを悠木自身と燐太郎が追求していく。18年たって初めて冷静に地元新聞記者として未曾有の大事故を総括出来た。その上での作品。なかなか読み応えのある作品です。