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死都日本

書名:死都日本
著者:石黒 耀
発行所:講談社
発行年月日:2002/9/1
ページ:520頁
定価:2300円+税

地球の歴史からすれば人間の歴史は短い。この物語は地球的規模で見た数万年というタイムスケールでダイナミックに破局的な噴火災害を描いている。過去、地球上のあちこちで現実に繰り返されてきた地学現象を今、起こったというシナリオで描いている。

南九州の霧島火山、実は加久藤カルデラ(かくとうカルデラ)南縁付近に発生した霧島山の成長によって一目でカルデラと判りにくくなっている。30万年前に火砕流を50キロ立法メートル以上噴出した。一瞬で雲仙普賢岳の1000倍以上の火砕流が発生する。南九州で30万年前の噴火と同じ噴火が起こるという未曾有の危機に、現代社会が体験したことがない惨事を招く、噴火が起こって、火砕流が流れ都城市、日南市、鹿児島市、宮崎市などが15メートル以上の高さの火砕流、熱風に瞬間的に壊滅してしまう。それをリアルに描いている。

それは20XX年6月19日に起こった。その24時間を克明に描いている。主人公は地学の大学教授黒木、新聞記者の岩切、霧島火山測候所から命からがら脱出するその過程。国、政府の対応、地方自治体の動き、自衛隊、現行法規のネックなどを次々と明らかにされている。噴火の後に噴煙によって西日本だけではなく、首都東京も覆われて大混乱、そしてその後東海地震、南海地震も発生?というところで終わり。

大噴火の後に寒冷化による世界的に食糧不足、日本の破滅だけではなく、全世界の破滅、豊かな国でも飢餓で餓死者がでる。日本の国民は漂流民となって世界に流れ歩く、そのときK作戦と呼ばれた大胆不敵な全世界、特にアメリカに向けた経済戦争、起死回生の策とは?円売りで円安がどんどん進む、穀物の先物市場は高騰、ストップ高を続ける。そんなときにとった首相の決断とは?

歴史的に見ると日本人が踊り狂うような狂気を発したとき(お伊勢参りなど)は大災害が発生している。地震、富士山の噴火、浅間山の噴火と。この物語のときも長年政権を担当していた保守政党に見切りをつけて大騒ぎ選挙で新党が政権を担当した直後、この南九州の大噴火が起こった。

日本神話イザナギ、イザナミの話は、巨大な火山が噴火を描いている。イザナギ、イザナミは火山神、また聖書の黙示録も火山の噴火を描いていると。人類は火山というものに翻弄されたり、火というものを与えられたその他の生物とは違った発達した。でも火山は怖いもの、神話の時代に南九州の噴火、阿蘇カルデラ、奄美カルデラ群、鬼界カルデラ(きかいカルデラ)、阿多カルデラ(あたカルデラ)、姶良カルデラ(あいらカルデラ)などの活動から逃れるために神武の東遷、大和の地に移ったと。日本神話、聖書、コーランなどの古い記述の中に火山神が描かれている。神々の行動、実は火山活動を描いているのだとこの本では言っている。火山の噴火、地学の知識も豊富で最新の理論などを駆使してリアルに描いている。なかなかの大作、面白く読むと共に防災マニアルとしての読み方も出来る本だと思う。
みなさんに、薦めたい本です。

死都日本シンポ要旨集
http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/etc/abstracts.html
THE FLINTSTONE:小説家・石黒耀さんの大噴火シミュレーション『死都日本』(03.08.31)
http://www.bayfm.co.jp/flint/20030831.html