書名:本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」
著者:前泊 博盛
発行所:創元社
発行年月日:2013/3/1
ページ:397頁
定価:1500円+税
高校生でも理解出来る「日米地位協定」の入門書。ここには今まで誰も知らなかったことが書いてある
。なぜ戦後70年もたっても他国の軍隊が日本に進駐しているのか?サンフランシスコ講和条約で独立国として主権を回復したはず(たてまえ)の国にはそれと同時に日米安保条約が結ばれていた。内容を理解しない吉田首相1人だけが署名している。また原文は英語のみ。そしてくせ者が国会の承認のいらない「日米地位協定」。米軍関係者と外務省の一部の人間だけで密談で決まることができる不条理な仕組み。その全容を明らかにしている。そして国民の誰もが知らないうちに、戦後の占領政策が延々と70年続いてきた。
サンフランシスコ講和条約の締結する前、いかにして米軍をそのまま継続して日本に駐留させるか、駐留するために日米地位協定(日米行政協定)が先にあって、それの大義名分のために日米安保条約が、そしてサンフランシスコ講和条約が。そして砂川事件(1957年)で日本の国に軍隊(米軍)があるのは憲法9条2項の前段によって禁止される戦力の保持にあたり、憲法違反という判決を東京地方裁判所(裁判長判事・伊達秋雄)が行った。この判決に対してアメリカからの圧力に屈した最高裁判所(大法廷、裁判長・田中耕太郎長官)は日米安全保障条約のように高度な政治性をもつ条約については、裁判所は判断できないとした。これが有名な砂川事件。これによって憲法よりも日米地位協定、条約の方が上位の概念とされるようになった。それ以降しばしば高度な政治性をもつ条約等の理由で裁判所は判断を放棄してしまった。憲法違反の法律、規則、通達がまかり通ることになった。
ロッキード事件、小澤事件、福島第一原発の事故、そして再稼働問題、放射能汚染の問題にしても憲法以外の官僚が作った規則(国会の承認を得ない)がまかり通るようになっている。70年立っても独立国ではなくアメリカの属国、植民地のまま。それも沖縄の問題が段々と日本全体に波及して来ている。
なぜ米軍は、自国ではできない危険なオスプレイの訓練を、日本では行なうことができるのか?首都圏の1都8県(東京都、栃木県、群馬県、埼玉県、神奈川県、新潟県、長野県、山梨県、静岡県)横田プラコンという支配空域を米軍が支配している。関西に向かう民間機は一度千葉県上空でUターンして神奈川県の4500m以上を飛ばないといけない。羽田から直接西に空路をとれない。
米軍の犯罪に関しても日本には逮捕も起訴も出来ない。また日米地位協定で決められていることでも米軍が守らない(深夜の飛行訓練等)としても罰則も何もない。アメリカの軍隊のやり放題を放置しておくしかない。これだけ不条理な協定に今まで政治家も外務省も、官僚も国民も目をつぶっていた。そしてその事実を知っていた人はほとんどいなかった。読めばびっくりする事実に唖然とするととも、今までの政府の動き(とんでもない馬鹿な屁理屈を言たり、煮え切らない答弁、法律づくり)などが納得できる気がする。自民党に変わって民主党が政権を取ったとき、鳩山首相は沖縄の基地問題で県外と言って袋だたきにあった。その後の政権運営は最低だったけれど、じっくり考えると日本という独立国に外国の軍隊があること自体、とてもおかしな箏。そしてその基地を維持する費用の75%を税金で出している。またおもいやり予算として1800億円もだしている。
そして肝心なときアメリカ軍は日本と日本の国民を守ってくれるわけではない。(アメリカの議会の承認が必要)そして米軍が何人この日本にいるのかも、誰が入国しているかも日本側は全く判っていない。パスポートもビザもなしで自由に入出国できる。この本のキーワードとして適用除外。国内法を適用除外する。大気汚染法も放射能は適用除外、大事故、大事件が起こるたびに法律の欠陥が浮き彫りになるが、基本的な法憲法すら守られない。司法が独立していないこの国はこの先どうなっていくのか?不安になってくる。著者は沖縄国際大学教授、琉球新報の記者をしていたとき、外務省が存在を比定する外務省の「地位協定の考え方」という裏バイブルの全文を入手して琉球新報に掲載した経験もある。これを読むとアメリカ一辺倒、アメリカに諂ってきた歴代の閣僚たちの行動がよく見えてくる。必読の書だと思う。創元社の「戦後史の正体」孫崎 享著に続く第二弾です。
日米地位協定(にちべいちいきょうてい)、U.S. - Japan Status of Forces Agreement、SOFA。正式名称「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」
簡単に言うと「日本における、米軍の強大な権益についての取り決め」
目的は「われわれが望む数の兵力を日本国内の望む場所に、望む時間だけ駐留させる権利を確保すること」
目次
PART1 日米地位協定Q&A(17問)
1: 日米地位協定って何ですか?
2: いつ、どのようにして結ばれたのですか?
3: 具体的に何が問題なのですか?
4: なぜ米軍ヘリの墜落現場を米兵が封鎖できるのですか? その法的根拠は何ですか?
5: 東京大学にオスプレイが墜落したら、どうなるのですか?
6: オスプレイはどこを飛ぶのですか? なぜ日本政府は危険な軍用機の飛行を拒否できないのですか?
また、どうして住宅地で危険な低空飛行訓練ができるのですか?
7: ひどい騒音であきらかな人権侵害が起きているのに、なぜ裁判所は飛行中止の判決を出さないのですか?
8: どうして米兵が犯罪をおかしても罰せられないのですか?
9: 米軍が希望すれば、日本全国どこでも基地にできるというのは本当ですか?
10: 現在の「日米地位協定」と旧安保条約時代の「日米行政協定」は、どこがちがうのですか?
11: 同じ敗戦国のドイツやイタリア、また準戦時国家である韓国などではどうなっているのですか?
12: 米軍はなぜイラクから戦後八年で撤退したのですか?
13: フィリピンが憲法改正で米軍を撤退させたというのは本当ですか?
ASEANはなぜ、米軍基地がなくても大丈夫なのですか?
14: 日米地位協定がなぜ、原発再稼働問題や検察の調書ねつ造問題と関係があるのですか?
15: 日米合同委員会って何ですか?
16: 米軍基地問題と原発問題にはどのような共通点があるのですか?
17: なぜ地位協定の問題は解決できないのですか?
PART2 「日米地位協定の考え方」とは何か
資料編 「日米地位協定」全文と解説
〇日米地位協定 〇日米安保条約(新)
2013/03/05 [IWJ日米地位協定スペシャルVol.1] 岩上安身による『日米地位協定入門』著者 前泊博盛氏インタビュー | IWJ Independent Web Journal
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/63401
【日米地位協定 入門】 天木直人・前泊博盛の対談 2013/3/5 【1:18:36】 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=krV62aIe1_M
機密文書「地位協定の考え方」
http://eritokyo.jp/independent/nagano-pref/kimitsubunsho-l01.html