記事一覧

本に出会う

まりしてん誾千代姫

書名:まりしてん誾千代姫
著者:山本 謙一
発行所:PHP研究所
発行年月日:2012/11/26
ページ:429頁
定価:1800円+税

九州の猛将である立花宗茂とその奥方誾千代(ぎんちよ)の物語。立花宗茂の名はいろいろなところで出てくるが、その奥方となるとほとんど知らない。その奥方誾千代姫に焦点を当てた小説。フィクションの面白さを楽しませてくれる作品。筑前立花城(現在の福岡県新宮町、久山町、福岡市東区にまたがる標高367mの立花山山頂にあった城郭)の城主戸次道雪は岩屋城・宝満城城主の高橋紹運と大友氏の家臣として親しい関係にあった。

戸次道雪の娘千代姫は高橋紹運の次男千熊丸(後の立花宗茂)を婿に迎える。そのころ大友氏の力が弱くなっていて、筑前、筑後は戦乱のるつぼと化していた。道雪から立花城の城督を譲り受けた千代姫は「自分のために生きるな。世のため、万民のために生きて死ね。それが人の上にたつ者が、必ず持たねばならぬ心がけだ」という教えと共に「戦国の世は、女にとって生きづらい、でも強く生きたい」と自ら女性だけの鉄砲隊を組織して男勝りに戦国の世を生きていく様を描いている。

「まりしてん(摩利支天)」とは、「勝利をもたらす軍神ながらも、陽炎のごとく光に満ちた美しい女神」。この神を心の支えとして「噂に違わぬ武者ぶりよ」と猛将・加藤清正、豊臣秀吉にも一目置かれた誾千代姫。関ヶ原以降の立花氏の盛衰の歴史の中にこんな女性がいたのかと、立花宗茂より魅力的に描いている長編歴小説です。誾千代姫の従者のみねという女性が誾千代姫の生まれる前から、亡くなるまで回想風に語る物語になっています。一気に読んでしまった。