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天翔ける女帝

書名:天翔ける女帝
著者:三田 誠広
発行所:廣済堂出版
発行年月日:1999/2/15
ページ:291頁
定価:1619円+税

孝謙=称徳天皇は、天皇でありながら道鏡の魔力に負けて淫乱な生活を送り、歴代天皇の系図に大きな汚点を残した女帝として語られることが多いが、果たして本当はどうだったか?聖武天皇と光明皇后(藤原不比等の娘)との間に生まれた阿倍媛(孝謙=称徳天皇)は神宿る皇女として天命にいきるが、光明皇后の寵愛を受けて権勢を拡大していく藤原仲麻呂(藤原恵美押勝)に傀儡として存在感はなかった。遣唐使として唐から吉備真備は一時聖武天皇の大仏建造に行基、良弁、橘諸兄らとともに活躍するが、藤原仲麻呂に追いやられ再び遣唐使として唐に派遣されてしまう。藤原仲麻呂の絶頂期に帰国して太宰府で密かに軍を組織して実力を蓄えていた。その吉備真備の戦略で道鏡を称徳天皇に近づける。また藤原仲麻呂の失脚を画策する。

遣唐使の吉備真備が帰国して、しばらくして疱瘡(天然痘)が流行して藤原4兄弟(藤原武智麻呂(680-737) - 南家祖、藤原房前(681-737) - 北家祖、藤原宇合(694-737) - 式家祖、藤原麻呂(695-737) - 京家祖)が相次いで亡くなってしまう。これが我が国に天然痘が流行した最初の出来事。これで藤原一族の息の掛かった人々がいなくなったことで聖武天皇は大仏造建に力をいれる。古代宮廷を巡る権力争いの凄まじさを淡々と描いている。史実とは少し外れているが、さもあるかもと思わせながらの筆の進め方はなかなかのものである。奈良時代を面白く見せてくれる。