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影の系譜

書名:影の系譜 杉本苑子全集9
   豊臣家崩壊
著者:杉本苑子
発行所:中央公論社
発行年月日:1997/5/7
定価:3600円+税

「とも」という一人の女。実は豊臣秀吉の姉(父は同じ)。このともが主人公、豊臣秀吉の家族から見た豊臣政権の崩壊を描いている。ともの良人は近隣の百姓。秀吉がどんどん出世してしまうのでサムライになって戦争に狩り出される。元々のサムライではないものだから戦争のたびにいやいや出掛ける。人の生き死にばかりを見て厭になって精神的に参ってしまい早く亡くなってしまう。その後嫁いだのは三好吉房。秀次、秀勝、秀保の3人の子供を産む。秀吉の異父の弟、秀長、妹旭姫(40才頃に無理矢理徳川家康の正妻になる)秀吉の兄弟たちの視点で物語は進んでいく、あまりにも一気に出世してしまった秀吉に戸惑いながら、能力も力もないのにどんどんと重要な位に付けられてしまった親族の面々が結果的に自分の意志とは全く別の時代という化け物に翻弄されていった時代を描いている。

 この本が出版されたときにNHKの「おんな太閤記」が放映された。その時この影の系譜で異父妹旭姫の幼名を「きい」その最初の良人の嘉助と名付けた。旭姫は前半生が殆ど分かっていない。そこで物語として付けた名前が「きい」「嘉助」それをNHKのドラマで使った。(著作権違反?ではないけれど)とあとがきにしつこく書いている。「おんな太閤記」の原作は橋田壽賀子。でも旭姫しかつかっていない。NHKのチーフプロデューサーが持ってきたとのこと。「おんな太閤記」という本で出版されたときは使っていなかった。こんなことがあるのですね。最近の大河ドラマ「あつひめ」も本当にそんな名前だったか?史実は良く分かっていないらしい。だから物語は面白い。歴史資料としてみてはいけない。あくまでフィクションの世界ですね。