記事一覧

本に出会う

調査報告 チェルノブイリ被害の全貌

書名:調査報告 チェルノブイリ被害の全貌
著者:アレクセイ・V・ヤブロコフ他
監訳:星川 淳
発行所:岩波書店
発行年月日:2013/4/26
ページ:296頁
定価:5000円+税

以前から読みたいと思っていた本です。ようやく借用しました。何でも岩波書店は3000部刷ったとか。横浜市の図書館でも2冊しか置いていない。1986年のチェルノブイリ原発事故をめぐり、「犠牲者数は約4千人」などとする「公式発表」は全く事故の実体を正確に捉えていないとして2007年に纏められた報告書の日本語版です。チェルノブイリ原発事故から27年、「北半球全域を覆った放射能による死者数は約百万にのぼり、その環境被害は今も進行中である」と衝撃的な内容です。
チェルノブイリ事故に関する報告は、ロシア語などのスラブ系言語のものを中心に合計3万点以上にのぼりますが、英語の報告は少ないのでいままで見る機会も少なかった。またIAEA報告、WHO報告を鵜呑みしてしまっているマスコミ等からはこんな報告書の存在さえ知らせられなかった。

事故当時3年半は事故に関する情報は殆ど秘密にされていた。したがってどれくらい被曝した全体量などもハッキリ判っていない。特に半減期の短い放射能核種については情報がない。(ヨウ素など)
したがって純科学的な論文ではデータ不足で放射能との相関関係が証明できない。しかし現実は事故が起きた。そしてこんな症状に苦しんでいるという臨終のデータを、汚染の程度によって比較している。
科学的に証明できないということよりも現に今、困っている症状の人をどう対応するかが先、科学的に犯人が分かっても今を生きている被爆者、被害者は救われない。

でもこの報告書はロシア、ベラルーシ、ウクライナ国内で発表されてきた論文に加えて、ドイツ、スウエーデン、トルコ、イギリスなどチェルノブイリ事故によって放射能汚染が起こった国々からの報告も入っています。マクロで見ると被曝よる影響の度合いを冷静に見られますが、これが自分の家族、知人なんかと仮定した瞬間にこの本を放り出したくなるような内容です。この報告の中に1人1人の被害者がいるという基本的なことを忘れないようにしたい。

被曝によって体のいろいろなところが劣化して、免疫機能も失われていく、それも時間と共に、多量の被曝と低線量被曝の違いは時間の違い、この報告では27年の記録を元にしているが、時間と共に段々と体を蝕んでいく、今後も進行中という。老化現象も目立ってきている。福島第一原発事故の今後についても示唆するものが多い報告書です。

チェルノブイリ被害の全貌~アレクセイ・ヤブロコフ博士講演会
http://www.youtube.com/watch?v=lcdA5Xge0cI