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絵島疑獄

書名:絵島疑獄 杉本苑子全集13
著者:杉本苑子
発行所:中央公論社
発行年月日:1997/2/7
定価:3600円+税

舟橋聖一の小説「絵島生島」、歌舞伎、映画などで歌舞伎役者生島新五郎、大奥女中生島との情事などと誤解されている事件を少し史実にあったように物語風にしている。現在風に言えば大奥の御年寄絵島はキャリアウーマンでも優秀な出世頭。将軍家継の生母月光院を中心とする勢力の中心的人物、6代将軍家宣に見出された新井白石・間部詮房、「生類憐れみの令」を廃止したことでも家宣は名君といわれている将軍、残念ながら将軍になって4年であえなく亡くなってしまう。その後を継いだのが7代将軍家継(最年少将軍)。家宣の代にしりどけられていた家臣達、林大学、将軍家宣の正室・天英院父近衛基熙(元太閤)の勢力。尾張徳川家、紀州徳川家などの徳川家のお家騒動の大きな渦に巻き込まれた絵島を描いている。信州高遠に流されて28年後に亡くなった一人の女の物語ですが、スケールが大きい。権力争いのすさまじさ、嫉妬の怖さ今に通じる人間の持っている業(ごう)が見えてくる。今までとは違った見方で江戸時代。次の世は紀州徳川家の吉宗の時代。権力の移り変わりにそれぞれ物語がある。