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世界史の誕生 モンゴルの発展と伝統

書名:世界史の誕生
   モンゴルの発展と伝統
著者:岡田 英弘
発行所:筑摩書房
発行年月日:1999/8/24
ページ:286頁
定価:740円+税

今までの世界史で、茅の外に置かれていた中央ユーラシアの草原の民の活動、実はモンゴル帝国とともに世界を意識することになった。世界史はモンゴル帝国ととみ始まったと唱える。清朝も中華人民共和国もモンゴルを継承した政権、ロシアもソ連もモンゴルを継承している。資本主義の原形もモンゴルの不換紙幣の発明に源流をたどることが出来る。歴史は文化だ。岡田史観が判る本です。

中央ユーラシアの草原の民が広い大陸を支配し、時たま中国、朝鮮、渤海、シベリア、ロシア、トルコ、西アジアに侵攻して、それぞれの地域を支配してきた。今でもテムジン(チンギス・ハーン)の系譜が残っている。モンゴルは独裁制ではなく、多数の遊牧民の部族の代表を集めて最高指導者を選挙して選ぶ。チンギス・ハーンもそうして選ばれた。モンゴル帝国という言い方は少し違っている。帝王でも帝国でもない。これはローマ帝国についても言える。元老院の会議で最高指導者を選挙している。今皇帝と言われているのは中国の皇帝を明治時代、ローマにも適用したため。

今まで知っていた世界史とは全く違った角度からの視点が新鮮だ。でも知らない場所、名前、国、王朝などが一杯出てくるのでなかなか読みづらい。ユーラシア大陸部分をモンゴル、その後継の勢力に支配されていた西欧の諸国が16世紀海洋国家として世界の海を支配するのは必然的に起こったと言う。陸路を支配されていた。ポルトガル、スペイン、イギリスなどは海に逃れるしかなかった。でも結果的に船の輸送力、そして拠点(港)を支配するのは簡単だった。

その時代日本も和冦として海の時代があった。日本では日本史、東洋史、西洋史と3つに分かれた学問になっているが、これらは本来一つでないといけない。しかし今までいろいろ努力してきたがこれを一つにするのは至難の業だと。

歴史とは創作物であり、文化であり、人間の頭の中で考えたこと。思想があるもの。したがってそれぞれの歴史は違う。どの視点で、どの場所で、どの時間でみるかによって変わってくる。それが自分の経験であるとすれば本の少しのことしか経験できない。また人の視点であればもっと多くの経験があるがそれはそれぞれの人によって違ってくる。したがって「真実の歴史」などあり得ない幻を追いかけること。それを意識していないととんでもない泥沼に陥る。