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オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史3

書名:オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史3
   帝国の緩やかな黄昏
著者:オリバー・ストーン
発行所:早川書房
発行年月日:2013/6/15
ページ:493頁
定価:2200円+税

自由、平等、民主主義を標榜してきたアメリカ、でも実態はとんでもない怪物だった。第二次大戦以降ソ連との冷戦を仕掛けたのもアメリカ。ソ連(共産党)を毛嫌いしてた保守派、多国籍企業群、軍需産業、それの片棒を担いだトルーマン以下歴代の大統領たちの知られざる実態を暴いている。そんな中にあってルーズベルト大統領の時の副大統領ヘンリー・A・ウォレスという人がいた。この人はトルーマンと闘った副大統領指名選で圧倒的に有利だったにも関わらず保守派の強引な反対のため、トルーマンが副大統領に1945年4月ルーズベルトが亡くなるとトルーマンが大統領に、そして原爆の投下。ウォレスが大統領になっていたら、原爆の投下も東西冷戦もなかったかも?これはルーズベルトが亡くなっていなければ?でも同じ箏かもしれない。

アメリカには戦争経済が継続的に必要、ということで何かきっかけを見つけて10年毎に戦争を仕掛けている。中南米の諸国へ、ベトナムへ、中近東へと。アメリカ1国の軍事費はその他の国々を合わせた額と同額、世界中の基地は1000ヵ所とも2000ヵ所とも25.5万人の兵士がアメリカ以外の各国に常駐している。それも東西冷戦が終わったというのに。次々と仮想敵国を作っていく。

「ゴルバチョフが捨て身で提示した核全廃の選択肢を、ソ連の脅威を楯に拒否したのはアメリカ」
「ソ連への牽制のため、イラン、イラクなどのイスラム国家を利用、対立する国双方に武器や資金を提供し、戦争の火種を撒き散らした」「イスラム原理主義者に直接・間接的に資金提供を続け、9・11テロの原因を作った」「未曾有の被害をもたらした9・11テロをも利用し、二つのイスラム国家に戦争を仕掛けた」テロの脅威を世界中に宣伝して大戦争にしてしまった。どうしようもないブッシュ大統領、そしてそれに輪をかけたオバマ、選挙公約とは全く違った方向に、軍部、財界、保守タカ派のいいなりになっている。

テロというのは戦術、戦略でも戦争でもないものを戦争まで強引に拡大してしまった。テロの被害は限定されるが、戦争はその何百、何千倍の人が殺される。そしてそれらを決めたのはベトナム戦争のときも徴兵免除組、実際に戦争に参加したこともないエリート組、実際に戦場に追いやられるのは貧乏な人々。1%の金持ちが世界の90%の富を持ち、99%の貧乏人が10%の富を分け合う。こんな格差社会を推進してきたのはアメリカの戦後の大統領たち。

「富めるものは益々富み、貧乏なものは益々貧しく」アメリカンドリームなんて夢のまた夢にしてしまった。アメリカの現代史を正史(為政者の視点)とは違った別の視点から鋭くついている。是非読んでおきたい本だと思う。この流れを見ていると10年後、20年後の日本が見えてくる。今の政府の動きなど見ていると非常に危ない。アメリカがやったことをなぞっていくような気がしてしまう。

オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史
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