書名:世界史とは何か 岡田英弘著作集Ⅱ
著者:岡田 英弘
発行所:藤原書店
発行年月日:2013/9/30
ページ:518頁
定価:4600円+税
この本は岡田英弘がいろんなところで講演をした内容を文字に直したものです。したがって難しい論文ではなく、口語文から文語文への変換という感じで非常に判りやすい本です。長編ですがいろいろな講演記録が集められているので意外と長さを感じない本です。岡田史観の世界史を描いています。中央ユーラシアの歴史を理解しないと世界史が判らない。世界史は中央ユーラシアが世界を動かしてきた。現在残っている地域紛争、民族紛争のネタもやっぱり中央ユーラシア、専門はモンゴル史ですが、それ以外にも世界史を鳥瞰的に概観しながら、人の移動、文化の移動、そして歴史の本質を鋭くみていると思う。ゲルマン民族の大移動は何故起こった。モンゴル帝国の子孫がロシア、中国を継承してきた。インドのムガル帝国もモンゴル帝国の子孫から、多岐に渡って世界史を説明、解説しています。今までとはすっきりと世界史が見えてくる岡田史観です。
歴史は時の為政者、権力者の都合の良いように書かれる。当然湾曲して書かれている。其れの中から事実を見つけて行くことが必要。そして為政者権力者の意志をくみ取ることが必要。ひとりひとりに歴史観はある。歴史は不変なものではなく常に変動しているものということがよく分かる。後世の淺知恵で過去の歴史の評価、価値判断をしてはいけない。善も悪もない事実の探求が歴史をするもの努めか。ウクライナ、セルビア、バルト三国などほとんど興味を持ったことがなかった地域、でも世界史の中では結構重要な地域。モンゴルがヨーロッパを制圧したとき皇帝の死で東経15度線で撤退したことでフランス、スペインは征服されなかった。あの死がなかったら今のヨーロッパは?国、民族、何々人などという定義は曖昧です。そしてそんなことを言い出したのはごく最近のこと。長い間迫害されてきたユダヤ人、でもこのユダヤ人の定義もできない。日本というところから考えると国というのも民族というのも何となく判るが、ユーラシア大陸など隣には人為的な国境線が引いてあるだけ、人々、文化の行き来は常にあったはず、国、民族、言語などに名称を無理につけているだけ。面白い本です。